あれも、これも、かなう。西武鉄道
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西武鉄道

西武鉄道社員がかなえたい

あれもこれもストーリー

Vol.3 「新型特急車両『Laview(ラビュー)』
プロジェクト担当者の熱い想い」

「いままでに見たことのない新しい車両」というコンセプトのもと、デザイナー・妹島和世氏の手でデザインされた25年ぶりの新型特急車両『Laview(ラビュー)』。2019年3月にデビューをした『Laview』ができるまでのストーリーに迫ります。

今回お話を伺ったのは、プロジェクト担当者である桑原真理子(クワハラマリコ)さん。新型特急車両開発のタイミングで車両部へ異動した桑原さんは、入社30年と社歴は長いものの、車両に関する知識や経験は少なかったと言います。今回のプロジェクトにおいて、桑原さんはどのような想いを抱き、その想いを実現させていったのでしょうか?

「いままでに見たことのない新しい車両」
新型特急車両『Laview』とは?

2019年3月にデビューする西武鉄道の001系新型特急車両『Laview(ラビュー)』。球面形状の前面、景色に溶け込むシルバー調のボディ、パノラマで景色を臨める大きな窓、リビングのような居心地の良さを追求した車内…。建築家・妹島和世氏のデザインと、日立製作所の技術力により実現した、これまでの特急車両の常識を覆すような、次世代のフラッグシップトレインです。


▼『Laview』の運行概要

  • 運行開始時期: 2019年3月
  • 運行区間: 池袋線・西武秩父線(池袋~西武秩父駅間)
  • 停車駅 ちちぶ号: 池袋・所沢・入間市・飯能・横瀬・西武秩父
  • 停車駅 むさし号: 池袋・所沢・入間市・飯能
    ※停車駅は現在のちちぶ号・むさし号と同様です。
  • 特急料金: (大人)300~700円 (小児)150~350円

※特急料金・特急券発売場所は現在の特急レッドアロー号と同様です。

01

新しい西武鉄道の

象徴となる車両を

ー桑原さんの現在の業務内容を教えてください。

桑原「車両部車両課の企画担当、新型特急担当として、新型特急の車両デザインを車両メーカーの日立製作所、プロジェクトチーム、社内関連部署と調整しながら想いを形にしていく業務を行っています。たとえば、コンセプトのひとつでもある『リビングのように大きな窓を設置したい』と声があれば、日立製作所と強度を確保しつつどこまで窓を大きくすることが可能かを調整し、『車両を外から見た際に窓にはドットが入ったほうがシルバー調の外板とつながって綺麗に見える』との声があれば、実際にサンプルを製作し車両に設置し走行させて見え方を確認するなど、ひと事でいえば、デザイナーの車両デザインをどれだけ反映できるかを調整し具体化する仕事です」

ー特急車両の新造は25年ぶりとのことですが、車両開発の経緯を教えてください。

桑原「現在運行している10000系『ニューレッドアロー』は1993年にデビューしており、25年間お客さまにご利用いただいています。これからもお客さまへより良いサービスを提供する事を第一に考え新造することを決定しました」

―車両のコンセプト、デザイン開発に向けて、社内でプロジェクトチーム(以下PT)を結成したそうですね。

桑原「はい。通常は『車両部』が車両製作を担当しますが『いままでに見たことのない車両』を製作するため、車両部以外の部署から人選し、車両コンセプト設定から参加を依頼し意見を吸い上げ、西武鉄道の象徴となる洗練された車両デザインを目指すためPTを結成しました」

周囲の景色を存分に楽しめるリビングのように大きな窓

外から車両を見たときの美しさを引き立てる窓ガラスのドット

02

デザイナーの意向を

最大限に活かす

ー新型車両は未来的なデザインが目を引きますが、どのようなコンセプトをもとにデザインされていったのでしょうか?

桑原「PTからデザイナーには『西武線沿線の風景に溶け込むような、地域の誇りとなるような車両空間』、『“西武らしさ”と“やさしいおもてなし”』、『いままでに見たことのない新しい特急を』という3つのコンセプトを提示し、デザインをお願いしました。秩父を走ったときに周囲の緑が車両に映り込み、また車内の大きな窓からは両側の景色を楽しむことができるボディの設計、西武線の車両としてなじみのある黄色を基調とした車内の色合い、リビングのようにくつろげる座席の設計……などなど、随所にそのコンセプトが反映された車両になっています」

ーデザインコンセプトの実現に苦労された点はありますか?

桑原「やはり車両という特性上、制約が多すぎて、デザイナーのイメージを完全に反映できないことがありました。本当は、窓ガラスは車内の柔らかい印象に合わせてカーブを描いた形状にしたかったのですが、強度面やコスト面で実現できなかったり、天井照明は光あふれる光天井にしたかったのですが、車両の制約上実現できなかったり…。しかし、お客さまへ快適な車内空間を提供したいという想いから、テーブルの大きさにはこだわり抜き、秩父へのハイキング時などにお弁当を食べることが出来るサイズのインアームテーブルに加えて、通勤時パソコン対応可能なサイズを確保した背面テーブルの設置も実現することができました」

お弁当を広げることもできるインアームテーブル

通勤時にゆったりとPCを使える背面テーブル

03

デザイナーとのコラボレーションで

完成した新型特急車両

建築家:妹島 和世氏(基本デザイン監修) ©Aiko Suzuki

ー建築家・妹島和世氏との協業はいかがでしたか?

桑原「プリツカー賞も受賞され、世界的に著名な妹島先生のデザインを車両に反映できることにワクワクしていました。妹島先生は車両デザインが初めてということで、今回のお仕事を引き受けてから他社のいろいろな電車に乗ってイメージを膨らませてくださったそうです。また、コンセプトに合う車両デザインにするため、PTとの打ち合わせの際もざっくばらんにお話をしてくださり、何度も打ち合わせを重ねてイメージを膨らませ、徐々に特急車両のデザインの原型ができあがっていきました」

ー妹島氏含め4名のデザイナーさんとのコラボレーションでしたよね。

桑原「はい。妹島先生監修のもと、テキスタイルデザインは安東陽子氏、照明デザインは豊久将三氏、デザインコーディネーション・グラフィックデザインは棚瀬純隆氏が担当してくださいました。 それぞれのデザイナーのデザインは方向性が既に定まっていましたので、その意向を忠実に実現させることに、常に気をつけていました。当社の意見、要求にも真撃に耳を傾けてくださいましたし…。新型特急車両はデザイナー、PT、車両部特急チーム、そして各関係部署、それぞれが歩み寄りながら完成した車両です。当初のデザインから実車両デザインへと刻々と変化していく様子を間近で感じられたことはとても幸せでした」

テキスタイルデザイナー・コーデイネーター:安東 陽子氏

テキスタイルデザイナー・コーデイネーター:安東 陽子氏

照明家:豊久 将三氏

照明家:豊久 将三氏

建築家:棚瀬 純孝氏(デザインコーディネーション・グラフィックデザイン担当)

建築家:棚瀬 純孝氏(デザインコーディネーション・グラフィックデザイン担当)

04

配慮が行き届いた

車両へのこだわり

ー新型特急車両のデザインについて個人的な思い入れが強いポイントなどありましたら教えてください。

桑原「座席シートの形状とカラーです。座席シートのモケットは生地選びだけで1年近くかかりました。西武線の車両としてなじみのある黄色を基調とした温かみのあるカラー、そしてメンテナンスの面でも容易で..と追求していき、織物メーカーから糸のサンプルを取り寄せ、カールのかかり具合や色味などを何十種類も吟味したうえで、糸のカラーの混ぜ方を特注しました。座席シートのメーカーさんとは、個人のスペースを快適にしてくれ、身体を包み込むような形状の座席をはじめ、出し入れのしやすいインアームテーブルやPCなどを使用しやすい背面テーブル、快適なヘッドレストなどを模索。ひとつひとつのアイテムをさまざまな方向から、細部にまでこだわり抜いてセレクトしました」
※モケット…パイル織物の生地の一種

―本当にリビングにいるような心地よい空間ですよね。

桑原「はい。カーテンにしても素材のカラーや透け感、カーテンの長さ、ドレープ幅、縫い目の位置、車内の景観などはもちろん、夕方に車外から車両を眺めた時の照明光の漏れ方や、朝昼夕の自然光の当たり方も実際にテストし、お客さまにくつろいでいただくために最良と感じる素材をセレクトしています。まぶしさを感じさせず明るくする、そんな一見矛盾しているかのような要素を両立させ実現できるデザイナーの皆さまの凄さを感じました。また、車内ビジョンは壁に埋め込む形が多いのですが、新型特急車両ではあえてリビングのTVのように設置しています。高さ制限のある天井も、少しでも広く感じていただけるよう最大限に高さを確保しました。そういったさりげないところから贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間を演出しています。」

―ほかに注目してほしいポイントはありますか?

桑原「サニタリ関係のアイテムや配置にこだわりました。過去5年間のお客さまの声によると、特急車両のトイレには入りたくないという特に女性のお客さまの声が多かったのです。そのイメージを一新しようと、女性が入りたくなるようなトイレをデザインしてもらいました。ストッキングやおむつの交換ができるチェンジングボードや姿見、操作はドアを開閉するとき以外はタッチレスにしました。また、パウダールームには化粧のしやすい拡大鏡も設置しました。エントランスの床は高級感のある人造大理石を使用しておりますので、ぜひご注目ください!」

数多くのサンプルから厳選したカーテン

リビングを感じる車内ビジョン

ロゴの表示色にも細かなこだわり

女性が使いやすいパウダールームも設置

05

要所にセンスと

こだわりが光る

ーぐるっと中を見てみると、随所にさすがデザイナー車両という雰囲気がありますね。

桑原「車内で言えば、たとえば “SEIBU FREE Wi-Fi” のステッカーもカラーが違います。通常はブルーですが、黄色の座席シートのある車内では目立ちすぎてしまうので、デザイナーとグレーにしようということに..新しく製作してもらいました。『そこまでやるの?』という声もありましたが『カラーだけでも!』と実現できました。また、他にも車両番号やサニタリの標記は車両デザインにあわせて切り文字を使用しています。贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間を演出するためにデザイナーが譲れなかったポイントです」

ー『Laview』という名称にもこだわりを感じますね。

桑原「コンセプトやデザインから連想するキーワードなどデザイナー、PT、車両部特急チーム、そしてと各関係部署とブレインストーミングし、100以上におよぶ候補案から最終的に3候補に絞り、さらに“レッドアロー”という継承案も含めて社内アンケートを踏まえ決定しました。何カ月もかけてみんなで考え決まった名前です。当初は名称決めという重圧に押しつぶされそうになりましたが、今ではとても愛しています(笑)。贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間、矢(arrow)のような速達性、大きな窓から移り行く眺望(view)という意味と、これからの100年、西武鉄道のフラッグシップトレインになるようにという願いが込められています」

特別に制作した “SEIBU FREE Wi-Fi” のステッカー

譲れなかったポイントの切り文字標記

06

ゼロからのスタートでも

諦めなかった理由

ー桑原さんのキャリアからすると今回は異例の着任ですよね?

桑原「『なんで私が!』と思いました。わからないところに飛び込むというのは怖かったですし、異動したては迷惑をかけてばかりだったと思います。私は西武鉄道に入社して旅行業務に18年、その後、交通広告の媒体を管理する部署に9年在籍していたのですが、車両設計についての知識はまったくありませんでした。それが、車両部に異動してからは専門用語ばかりの毎日で、何がわからないのかもわからなくて聞くに聞けない日々でした。『私は何をしているのだろう?』『ここでやっていけるのか?』と自問自答ばかりしていました」

ーそんななか、どうやってモチベーションをあげていったのですか?

桑原「何もできないまま諦めるのはイヤでしたので、出来ることから進んでやっていこうと思いました。もともとインテリアデザインに興味があったので、お客さま目線、特に女性のお客さまにも好まれるデザインを実現したいという想いが原動力になりました。あと、実は初代レッドアローと同い年なんです。それで特急車両に親近感があり、大切に育てて皆さまに乗車してもらいたいという想いもありました(笑)」

いつでも綺麗なシートを保つために取り替え式のカバーを採用

細かなところにも工夫やこだわりが散りばめられている

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最も重要なのは

チームワーク!

ー今回のプロジェクトは桑原さんにとってどのようなチャレンジとなりましたか?

桑原「いままでに経験したことのない業務、いままでに見たことがない車両を製作すること、すべてがチャレンジでした。ご存知の方には当たり前のことかもしれませんが、『車両はすべて一から製作する』という発見からのスタートだったので…。手探りで進めていくなかで、最後まで諦めないこと、納得するまで議論をかさねることで道は開けるんだ!ということが実感できた素晴らしい経験になりました」

ー今回のご経験で得たものはなんでしょう?

桑原「仲間、そして絆です。壁にぶち当たってばかりだった私をサポートしてくれた新型特急担当メンバーがいてくれたからこそ、いままで頑張ってこられたのだと思っています。さまざまな意見を交換するなかで、ぶつかったこともあったのですが、ひとつのことを成功させるために集まったチームで、向いているゴールはみんな同じ。納得するまで生産的な議論ができたと思っています。同時に、仕事をするうえで、チームワーク、協調性、コミュニケーションがいかに大切であるかということを改めて実感しました」

08

『Laview』を

新しいスタンダードに

ー今後かなえたい目標や夢はありますか?

桑原「西武鉄道のフラッグシップトレインとして『Laview』の名前を国内外を問わず皆さまに覚えていただくこと。西武鉄道といえば、すぐ『Laview』と言ってもらえるようになることが私の夢です。そして、『Laview』に乗車したい!と思われるような車両に育ってもらいたいです」

ー『Laview』を利用される皆さまにメッセージをお願いします。

桑原「『Laview』は、沿線の景色を大パノラマでお楽しみいただける大きな窓、そして緩いカーブのあるやわらかな印象の先頭デザインが特徴です。大きな窓から外を眺めていただき、西武線沿線の新しい魅力を発見してもらえたらうれしいです。また、曲線的な運転席や遊び心のある前照灯なども、鉄道ファンの方々はもちろん、すべてのお客さまに喜んでいただける仕様になっています。秩父を走っているときなどは周囲の緑がボディに映え、見た目も大変美しく爽やかです。ぜひご乗車のうえ『ホッ』としたくつろぎの旅をお楽しみください」

稲葉 久美子

Vol.3 Profile

桑原 真理子(クワハラ マリコ)

車両部 車両課
1988年 入社

※所属等は、取材当時のものです。

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