西武秩父線50年のあゆみ

歴史HISTORY

 西武秩父線(吾野〜西武秩父間、19.0㎞)は1969(昭和44)年10月14日の開業以来、2019(令和元)年に50周年を迎えることとなりました。

 西武秩父線の開業以前、都心から秩父へは当時の国鉄高崎線・東武東上線から秩父鉄道に乗り換え、3時間ほどかかっていました。それが西武秩父線の開業に合わせて新たに製造した5000系特急車両「レッドアロー」での直通運転により、83分(現在は78分)にまで短縮されたのです。また、一般型電車として急勾配と通勤輸送のどちらにも対応できる101系も投入しました。

 西武秩父線建設の目的は、秩父神社や三峯神社、長瀞など多くの人気スポットを抱く秩父地域への観光輸送に加え、武甲山を始めとする豊富な石灰石資源の大量輸送にもありました。高度成長期真っ只中だった当時の日本において、石灰石を原料とするセメントの需要は高まっていました。首都圏に最も近い石灰石の産地である秩父地域と都心部との直結は、産業界にとっても大きなメリットとなったのです。西武秩父線の建設期間は2年3カ月あまり、総工費は70億円となりました。

 西武鉄道は、三菱鉱業セメント(現・三菱マテリアル)が西武秩父線沿線で行っていた採掘石灰石とセメント製品の輸送を担うこととなりました。「セメント列車」の重量は最大1000tにおよびます。当時の私鉄では最長の山岳トンネルとなる正丸トンネル(長さ4811m)を掘削しても最急勾配は25‰(パーミル)となり、これを克服するために私鉄の電気機関車としては初めてのF級(動輪6軸)のE851形も新製しました。E851形は私鉄車両としては最大となる2550kWの定格出力をもった、強力な電気機関車でもありました。

 セメント列車は当初、三菱鉱業セメント横瀬工場が置かれた東横瀬駅(貨物駅:96年廃止)から池袋、さらに山手貨物線に乗り入れて東海道本線・総武本線方面、また西武国分寺線を経て、中央本線方面へも運行されました。1976(昭和51)年以降は秋津〜新秋津駅間に設けた連絡線から、新たに開業した武蔵野線経由に改めました。

 5000系「レッドアロー」は95(平成7)年までに、10000系「ニューレッドアロー(NRA)」に道を譲って引退。E851形も翌96年の貨物列車廃止により廃車となりました。

現況CURRENT STATUS

 西武秩父線は吾野〜西武秩父間の路線ですが、普通列車は1両2扉車でセミクロスシートの4000系4両(一部8両)編成を主体に、西武鉄道池袋線と直通して飯能〜西武秩父間で運行されています。特急列車は「ちちぶ」の愛称で池袋〜西武秩父間に平日16往復、土曜・休日17往復(一部所沢〜西武秩父間)を運行しています。車両は10000系「ニューレッドアロー」と、2019年3月から001系「Laview(ラビュー)」が加わりました。土曜・休日には40000系「S-TRAIN」が西武秩父〜元町・中華街間(113.8㎞)の直通運行をしています。そのほか、西武秩父駅構内の連絡線を経由して、秩父鉄道秩父本線の長瀞・三峰口への直通乗り入れも行っています。

 吾野を出た西武秩父線の列車は、正丸峠に向かって勾配を登っていきます。西吾野は、関東三大不動の一つ高山不動尊(常楽院)や子ノ権現天龍寺、高山不動尊の奥の院でもある関八州見晴台の最寄り駅です。正丸は正丸トンネルの東側入り口にあたり、伊豆ヶ岳などへの登山口になっています。正丸トンネルは途中に複線区間の正丸トンネル信号場があり、列車の行き違いが可能です。

 トンネルを抜けた芦ヶ久保は「あしがくぼの氷柱」の最寄り駅。特急「ちちぶ」も停車する横瀬は、芝桜の丘として知られる羊山公園が近く、南側に横瀬車両基地があります。西武秩父線とゆかりの深い5000系「レッドアロー」とE851形電気機関車を、ここに保存しています。

 終点の西武秩父は秩父観光の拠点で、2017(平成29)年に駅舎をリニューアル、複合型温泉施設の「西武秩父駅前温泉 祭の湯」もオープンしました。秩父鉄道の御花畑駅へは徒歩5分、12月1〜6日(宵宮は2日、大祭は3日)の秩父夜祭を例祭とする秩父神社へは徒歩10分ほどです。

5000系TYPE 5000

 クリーム色の車体に真っ赤なライン、正面のステンレスの輝きも鮮やかな5000系電車は、「レッドアロー」の愛称で親しまれました。西武秩父線が開業した1969(昭和44)年から78(昭和53)年にかけて、合わせて6編成・36両を製造しています。西武鉄道としては初めてとなる座席指定制の有料特急専用車両としての設計を行い、当初から冷房装置を搭載しています。足回りは、平坦な西武鉄道池袋線から山岳区間の西武秩父線への直通運転が可能な101系電車と同様のスペックとしました。

 初めは4両編成でしたが、76(昭和51)年までに6両編成に統一しています。また、87(昭和62)年から翌88年にかけて、座席のリクライニングシート化などの「特別修繕」を施しました。

 5000系は94(平成6)年以降に10000系「ニューレッドアロー」への置き換えを進め、翌95年10月31日で定期運用を終わらせました。これに先立ち、10月14・15日には池袋〜横瀬間で「さよなら列車」を運行しました。最後の営業運転は同年12月3日の秩父夜祭大祭に合わせて運行された臨時特急「ちちぶ」でした。なお、10000系1編成を現在「レッドアロークラシック」として、5000系に準じたクリーム色に赤帯の塗色を施して運行しています。

 5000系の先頭車2両を横瀬車両基地に保存しているほか、6両を富山地方鉄道に譲渡しました。富山地方鉄道では16010形として、観光列車「アルプスエキスプレス」などに使われています。

5000系

E851形TYPE E851

 E851形電気機関車は、25パーミルの急勾配区間が続く西武秩父線での1000t「セメント列車」牽引に備え、1969(昭和44)年に4両を製造しました。国鉄のEF65形0番台直流機関車とほぼ同一設計の車体、EF81形交直流機関車と同じタイプの台車を装着しています。セメントを満載して上りの25‰勾配となる東横瀬〜芦ヶ久保間の飯能方面行き1000t列車は、重連で運行しました。

 真っ赤な車体にクリーム色の帯(のち白帯)をまとい、側面の丸窓が特徴的なE851形は、ファンの方々から「客車を引かせてみたい」と評判になった車両でした。西武鉄道における貨物列車の廃止により、E851形の引退を控えた96(平成8)年、「さよなら運転」でこの願いをかなえることとしました。JR東日本から12系客車6両を借り受け、5月25・26日の両日、所沢〜横瀬間でE851形にとって、最初で最後となる客車列車の牽引を行いました。牽引にあたったのはE853・E854号機で、このうちE854号機を横瀬車両基地で静態保存しています。

E851形
ページ上部に戻る