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「ちょうどよく」居心地のいい街・江古田で育んだ表現力を卒博で魅せる

日本大学芸術学部4年生の制作物を展示する「卒博」が3月15日から行われる。その卒博実行委員会の委員長を務める嶋孝脩さんは、演劇学科の4年生。卒博にかける想いや、江古田でのキャンパスライフについて語ってもらった。

卒博で体感してほしい「8つのアート1つのハート」

卒博とは、日芸8学科の4年生が卒業制作物を一斉に展示するもので、デザイン学科だけでも大ホールを貸し切ってしまうほど大規模な展示会です。入学当初、一つのグループに所属していたら視野が狭くなると思った僕は、日芸祭(文化祭)の実行委員会に入りました。それがきっかけとなって、卒博の実行委員も務めるようになったんです。委員の人数は30人ほどですが、組織としての歴史はまだ2年ばかりで、できたばかりの組織です。今年の卒博に関しては手探りの部分もあるのですが、それを含めてみんなと作り上げていくおもしろさがあります。

日芸のキャッチコピーは、「8つのアート1つのハート」。僕はこれを、それぞれ8つの言語があっても、物語っていることはすべて同じで、そのアプローチ方法が音楽やデザイン、演劇などと異なるだけなのだと解釈しています。もし自分の学科だけにいたら、それを体感することは難しいのではとも感じて、実行委員会で日芸のキャッチコピーを身をもって経験したいとの想いもありました。

その8学科が一堂に会して作品を展示することは、この卒博の機会しかありません。なので、できればすべての学科を回って、異なる言語でも一つのことを物語っているのだということを、卒博で感じてほしいと思っています。

江古田の好きなところは「ちょうどよさ」

最近までは卒博の準備をしつつ、卒論の執筆にも力を入れて、「リアリズム演劇における観客とのコミュニケーション」をテーマにした卒論を書き上げました。普段、こんなにも文章と睨めっこしていることはないので、ときどき無性に誰かとコミュニケーションを取りたくなる衝動に駆られましたね。卒論のほとんどは、適度に雑音があって集中できる大学の食堂か、吹き抜けのラウンジで進めました。集中力が途切れたらすぐに友達に会えるので、話して息抜きもできる。キャンパスには、誰かしらいるということが安心感にもなっていた気がします。

江古田は日芸のほかにも大学が2つあって、街は学生ばかり。それが居心地いいんです。街の雰囲気も賑やかすぎず、でも落ち着きすぎずでちょうどいい街ですね。特にお気に入りのお店は、オール300円の中華居酒屋「龍厨房」です。そこの豆苗炒めが好きで、打ち上げなどでよく使っています。あと、日芸のある江古田ならではだと思うのは、ブックオフに芸術関連の書籍が充実していること。絶版になってしまった書籍もあって、卒論を書く上でとても助かりました。チェーン店でもこの街らしさが感じられるんです。

それに池袋、渋谷、新宿などの都心にアクセスしやすいのも便利ですね。江古田に来る前は、アートの先端は都心にあると思っていたんです。でも日本国内には、地方にも根付いたアートがたくさんあります。そういう意味で、江古田は都心と地方の両方を俯瞰して見ることができるちょうどいい土地だとも感じています。

卒業後は大学院に進学し、専門的に舞台芸術を学ぶ予定です。そして、ゆくゆくはその道の研究職に就きたいとの想いもあります。生まれ育った地元の次に愛着のある江古田には、もう少しお世話になるつもりです。

他学科との交流が創作意欲を刺激する

日芸は、実践的な授業はもちろんのこと、いろんなジャンルの芸術を知識として学ぶことができる大学です。また、1つの作品を合同制作するなど、学科の枠を超えたコラボレーションなども行われ、他学科からの刺激が自分の専門分野にもいい影響を与えてくれ、さらに表現力を高めることができる環境があります。

卒博でも、学科の枠を飛び越えて1つの企画を作ってみたり、活躍している卒業生を呼んだりと、来場者だけではなく在校生にとっても表現の刺激になるようなさまざまな企画を考えています。また、文芸学科であれば、小説などの作品を展示しますが、その場ですべて読み切ることは難しいですよね。なので、気に入った作品があればQRコードで読み取って、家に持ち帰って読んでもらえるようにもしています。

普段あまりアートに馴染みがない方でも楽しんでいただけるよう準備しているので、ぜひ卒博に足を運んでいただいて、日芸らしさを体感してほしいですね。

卒博の実行委員会では「とても影響を受けた先生にも出会えた」と嶋さん。アートに関する先生の考え方や、イベントを遂行するにあたっての的確な視点とその実行力に大きく感化されたという。それが演劇へのモチベーションにも繋がっていったのだろう。その表情は、夢や希望に満ちあふれていた。日芸で4年間過ごし、さまざまな芸術に触れながら起こした化学反応を、卒博に訪れて感じてみたい。

日芸の卒博

2020年3月15日(日)〜22日(日)10:00〜18:00
※最終日は17:30まで
※3月21日(土)、22日(日)はスペシャルデイズ

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記事を書いた人

江古田キャンバスプロジェクト事務局