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毎年江古田駅周辺で開催されるイベント「えこだパンさんぽ」。運営の中心となって取り組んでいるお三方に、イベントの見どころや魅力を伺った。その後編では、イベントのやりがいやこれまでのエピソードなど、運営側の視点から「えこだパンさんぽ」に迫ってみる。
萩原さん:江古田はベーカリーが多いのも特徴ですが、ベーカリーに限らず地元出身の方のお店や事業が多い街なんです。また、大学も多いので、進学がきっかけで住みはじめ、大学卒業後、この街に愛着を感じて、事業を立ち上げている方も増えています。そんな、江古田に縁のある人々が、「えこだパンさんぽ」をきっかけに手を取り合い、一緒に街を盛り上げていけるのはとても幸運な機会だと思いますし、楽しく、やりがいを感じています。
大山さん:「えこだパンさんぽ」が始まって以来、人とのつながりが広がり、より密になったように感じています。江古田にある3大学の卒業生の方がイベントを目当てに再度街を訪れてくれたこともありましたし、アート展示や音楽イベントなどでも、たくさんの新たなつながりが生まれています。自分のお店をやっているだけでは得られない貴重な経験ができていると日々実感していますね。
萩原さん:「えこだパンさんぽ」の開催が決まった当初は、参加店を募るのも、参加店同士で連携を取ることも大変でした。各々のお店は自分たちの商売のこともあるので当然ですよね。でも、何度も意見を交わし合っていくうちに、イベントの成功に向けて一体化し、みんなで街を盛り上げようと協力し合うようになっていきました。それどころか、今では同じ街で暮らす仲間同士、以前より絆は深まったように思います。
YOSHIさん:ほんとそうですね。去年、桜台で開催されたさくら祭りで、「えこだパンさんぽ」でつながった仲間達と“パンさんぽチーム”として屋台をやったんです。江古田の街から共に一歩踏み出し、いつもは違うベーカリーでパンを売る者同士が足並みをそろえ、同じ店に一緒に立つなんて、以前は想像もできませんでした。これも一つのイベントの成果だと感じています。
大山さん:私も「えこだパンさんぽ」が始まってから、他のパン屋さんの話をよくするようになりましたね。うちに来たお客さまに「こんなパンが食べたいんだよね」と言われれば、「それならあそこのパン屋が美味しいですよ」と他店をお勧めしちゃったり。ライバル店のはずなのにおかしいですよね。最近は同じベーカリー仲間としてアドバイスをしたり、してもらったり。「えこだパンさんぽ」も各々の意見があってこそ、よりよいイベントになってきていると思いますし、日頃から一緒になって楽しむことが、「パンの街・江古田」の活気にもつながっていくような気がしています。
YOSHIさん:もっともっと多くの人が、外からやって来る街になったらいいなと思います。そのためにも、まずは地元から盛り上がっていこうと。外から見て、「面白そうだな」「遊びに行ってみたいな」「住んでみたいな」と魅力を感じてもらえるのが目標です。
萩原さん:私たちにとって、江古田といえば「商店街と個店」です。大型店舗や有名チェーン店はあるけれど、自由でユニーク、個性豊かなお店が連なっているこの街は、店主とお客さまとのつながりも深く、常に笑顔と会話が溢れています。そんな風景がもっともっと広がって、人と街が1つの集合体として盛り上がっていけたらいいなと思っています。
YOSHIさん:「えこだパンさんぽ」の中でもずっと開催してきた“パン歩きイベント”を通年で行っていければと思っています。まだ詰めていかなければならない部分はありますが、これまで以上に多くの方に、パンの街・江古田の魅力を知っていただくために、ぜひ実現したいと考えています。
大山さん:私は外国から来た方に江古田の街を巡ってもらいたいですね。江古田には、武蔵大学への交換留学生や来日してお住まいの方も結構いますし、江古田を1つの国に見立てて、国籍問わず住む人・来る人みんなが楽しめる企画にもチャレンジしたいです。江古田では、中華、イタリアン、フレンチ、イスラエル、ベトナム、スペイン、バングラディシュ、タイなどさまざまな国の料理が楽しめますので、まずは「えこだパンさんぽ」を機会に、江古田発・世界のグルメツアーを楽しんでほしいですね。
萩原さん:とにかく江古田の街が大好きで、愛着のある方が多い街です!
大山さん:そうそう、なんとなーく住んでいる人は少ないと思いますね。
YOSHIさん:そんな思いの強い方が「えこだパンさんぽ」をきっかけにもっと増えて、一緒になって街を賑やかに盛り上げていけたら最高ですね。
自らの本業と同じような熱量で、「えこだパンさんぽ」の意義とやりがいを語るお三方。その姿からは、自らが住み、働く街への誇りと愛着、そして、もっと多くの人とこの街の魅力を分かち合いたいという情熱を感じさせてくれた。この江古田の街を包むポジティブなエネルギーは人から人へ、街から街へと伝播し、やがて沿線を活気付かせていく。そんな日も、そう遠い未来の話ではないのかもしれない。