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食べるなら美味しいパンでないと嫌だ。
とはいえ電車を乗り継ぐほどの情熱はないので、歩いて買いに行ける場所にあるとうれしい。だって、パンは日々の食べ物だから。
江古田にはインディペンデント系のパン屋が多い。ジャンルも様々なので、その日の料理や気分にあわせて選べる贅沢さ。そんな江古田に、2018年、ファミーユ代官山がオープン。選べるパンの選択肢が増えて、パン好きには嬉しい限りです。
今回はフランス系パンのファミーユ代官山 小川高明さんにお話を伺ってきました。
江古田駅北口の商店街・ゆうゆうロードから税務署通りを環七方面にずっと進んだ右側のタイル張りのマンションにファミーユ代官山はあります。長く江古田に住んでいる人には「キッチンオバサン」の隣と言った方が通じるかもしれません。
お店の名前、江古田なのに代官山ですね。
ああ、何かそのままにしちゃって。
どうして江古田に移転することにしたんですか?
子供産まれて、子育てもあるし…。ぶっちゃけた話、代官山は家賃も高いんで。石神井が実家っていうのもあって、で、ちょうどここに。
代官山のお店は何年位してたんですか?
12年くらい。
じゃあ引越しする時、寂しかったですね。
いや、もうなんか、子育てが色々大変で寂しいとかじゃなかったかな。やらなきゃみたいな。
まだ全然お店が軌道に乗っていないのが正直なところで。まだ1年経ってないけど、もういい加減軌道に乗っとかないとまずいんだけど…今のところ、ちょっとまだこの街に馴染めていない。でも今試行錯誤で、いろんなことを今考えてる。
ポイントカードもできたし。
そうそうそう。ちょっとずつ、って感じですかね。
街に馴染めていない…ちょっとショックです。とはいえ、新しい街に馴染むのにはある程度の時間がかかるものだとは思うので、少しずつ江古田に馴染んで欲しいなと願うばかりです。
何でパン屋さんをやろうと思ったんですか?
大学行って、就職して、少しして親父が急に亡くなっちゃって、で、なんか手に職つけないと大変だなっていうんでパン屋さん。
お父さんがパン屋さん?
いや。スタートが25歳で料理人的にはもう遅いし、パン屋さんだと修行時間が短いからっていうのもあって、パン屋さん。まずは日本で修行して、30手前でフランスに。最初は人の紹介で、ディジョンの小さな個人経営のパン屋さんに受け入れてくれるところがあって、それで行ったって感じ。
ディジョンはどのくらいいたんですか?
ディジョンは1年弱かな。それからパリ。時間が限られてるけど、色んなところ見たくて、レストランで働いたり、パン屋で働いたり。
色んな所で働いたんですね。じゃあ、フランスでの修行後、日本に戻ってきてお店出したんですか?
フランスの後、韓国の釜山に行って技術指導をして、それから。
淡々と経歴を語る小川さん。世界各地で働けるなんて、手に職があるって強いですね…。
子連れのお客さんも多いですね。
そうですね。なので、こういうパン(クロックムッシュ)も作ったりしてます。
この前、前にいた小さい子が「クロックムッシュ買って」ってさらっと言っているの聞いて、ちょっとショックでした。
今の子はこういうの知ってるよね。どんどんみんな、子供の時からこういうの食べてると、舌が肥えて…。
羨ましいなあって思います。
作る方は結構プレッシャーになってくる!
私達の時代では「本格的」だったものが、今では普通になってますよね。
コンビニでもスーパーでも買えるから、こういう小さいお店は、どんどん美味しいもの、インパクトあるものを作っていかないと、って感じなんですよね。
これから頑張るにあたってやってみたいことってなんですか?
パンはパンで残しておいて、焼き菓子の方を頑張ろうかなって思ってます。焼き菓子も得意分野なんで。リニューアルを少しずつ計画中です。
「パン作りのこだわりは?」と尋ねると、「いいものを使うこと」と即答の小川さん。ディジョン時代に学んだパンの味を再現できる材料を選んでいるそうです。クロックムッシュが当たり前の小学生…。学生時代、今はなき原宿オーバカナルでクロックムッシュを初めて食べた私には隔世の感を禁じ得ません。心底羨ましい。
最後にファミーユ代官山のおすすめのパンを紹介します。