西武鉄道社員がかなえたい

あれもこれもストーリー

Vol.2 「ぐでたまスマイルトレインを手がけた企画担当者の想い」

「スマイルトレイン」の10周年と「ぐでたま」の5周年を祝して、2018年3月4日から記念キャンペーンが始まりました。サンリオとのコラボレーションであるこの企画では、ラッピング電車に始まり、フォトスポットの設営やオリジナルグッズの販売など、西武線ユーザーのみなさまはもちろん、ぐでたまファンや鉄道ファンなどにさまざまな方面からアプローチ。記念乗車券は早々に完売、SNSでも写真付きの投稿が多数アップされるなど、巷で話題になっています。


今回は、そんな「スマイルトレイン10th×ぐでたま5th記念キャンペーン」の企画担当者である稲葉久美子(イナバ クミコ)さんにお話を伺いました。2015年に入社し、現在は運輸部 スマイル&スマイル室に所属している稲葉さん。「人と関わる仕事がしたい」「お客さまを笑顔にしたい」そんな動機から入社し、本社勤務になって2年目のいま、稲葉さんはどんな想いでこの企画を手がけ、そしてどんな夢をかなえたのでしょうか?

「スマイルトレイン10th×ぐでたま
5th記念キャンペーン
~レールの上にも10年、白身の上にも5年~」とは?

今年で運行開始から10周年を迎える西武鉄道30000系車両“スマイルトレイン”は、「生みたてのたまごのようなやさしく、やわらかなふくらみ」をイメージしたデザインの車両です。そして、今年5周年を迎えたサンリオの人気キャラクター「ぐでたま」は、Twitterのフォロワー数が100万人を突破した、ぐでぐでとやる気のないたまごのキャラクターです。この度、“スマイルトレイン”と「ぐでたま」がコラボし、たまごがモチーフつながりでさまざまなキャンペーンを通じて2018年を盛り上げます。

  • ※ぐでたまスマイルトレインの運行は終了しています。
01

双方がハッピーになる
アニバーサリーを

双方がハッピーになる

アニバーサリーを

ー稲葉さんの現在の業務内容を教えてください。

稲葉「『運輸部 スマイル&スマイル室』に所属し、コンテンツとコラボした旅客誘致キャンペーンや各種イベントの立案・実施、またさまざまな媒体を活用した宣伝などを担当しています」

ー今回の「スマイルトレイン」と「ぐでたま」のコラボプロジェクトはどのような経緯で実現したのでしょうか?

稲葉「西武鉄道の30000系『スマイルトレイン』が運行開始から10周年を迎える今年、サンリオさんの『ぐでたま』も5周年を迎えるということで、せっかくならコラボレーションしてこのアニバーサリーイヤーを双方で盛り上げていこう!という流れで実施することになりました。『スマイルトレイン』はもともとたまごのデザインなので『ぐでたま』との親和性も高く、また同じ年にアニバーサリーというのは並々ならぬご縁を感じましたね。さらに『サンリオピューロランド』は、今回のキャンペーンの中心となっている『たま』川上水駅から多摩都市モノレールで1本!これは『たまたま』ですが、そんな偶然が重なった、奇跡的なプロジェクトだと思っています」

メイン会場!?の玉川上水駅。駅舎駅名標もぐでたま仕様に 

メイン会場!?の玉川上水駅。駅舎駅名標もぐでたま仕様に 

柱駅名標をデザインするのも初めての試み

柱駅名標をデザインするのも初めての試み

02

身にしみて感じた
社内の協力のありがたさ

身にしみて感じた

社内の協力のありがたさ

ーサンリオさんと協働するにあたり、楽しかった点ややりがいを感じたことを教えてください。

稲葉「もともとサンリオファンだったので、かわいらしい『ぐでたま』とコラボをする、という企画を聞いたときからワクワクしていました。『ぐでたま』は老若男女幅広い層に支持されているので、たくさんの方々に反応をいただけたのもやりがいを感じましたね。また、サンリオさんは女性の役職者の方が多く、性別にとらわれたりこだわったりせずにバリバリとお仕事をされている姿を目の当たりにしたことで、私自身非常に感化されました」

ーでは、苦労された点はありますか?

稲葉「スケジューリングですね。正式にキャンペーンの打ち合わせを始めたのが12 月中旬だったのですが『ぐでたまスマイルトレイン』の施工作業の都合上、実質3 ヵ月弱の準備期間でラッピング電車のデザイン・施工、各種告知物や記念乗車券の制作、また玉川上水駅の駅名看板やフォトスポットの制作、拝島ライナーお披露目イベントでのステージショーの段取り……などたくさんの施策を仕込まなければならず、2、3 月は『ぐでたま』漬けの毎日でした」

お披露目セレモニー。ステージショーも行なわれた

お披露目セレモニー。ステージショーも行なわれた

あっという間に完売した記念乗車券

あっという間に完売した記念乗車券

ーそんな多忙な日々を乗り越えるモチベーションをどうやって維持したのですか?

稲葉「周りの方々がサポートしてくださったからこそやってこられたのだと思います。記念乗車券発売の際やスタンプラリー実施の際など、各駅に足を運んでお願いにあがったのですが、『おもしろいことやってるね!』と声をかけてくださったり、以前お仕事でご一緒させていただいた先輩が『本社でもがんばってるんだね』と応援してくださったり……。それだけでなく、ポスターをたくさん掲出していただいたり、記念乗車券が発売されたときには改札前に特設ブースを設けていただいたりもしたんですよ。『仕事を増やしてしまってすみません』と謝ったら『すみませんじゃないでしょ、俺たちも同じ会社の一員なんだから!』と明るく笑い飛ばしてくれて、心の底から嬉しかったです。」

03

“初の試み”でも
果敢にアタック

“初の試み”でも

果敢にアタック

ー今回のプロジェクトは稲葉さんにとってどのようなチャレンジとなりましたか?

稲葉「本社勤務になって1年目は、自分が何をすればいいのか全然見えなかったんです。初めて担当したのはハロウィンイベントだったのですが、そのときもどう立ち回っていいのかさっぱりわからず……。自分のなかで悔しさがありました。今回は上司のサポートやアドバイスも多々いただき、大変やりやすかったです。初めて担当者としての実感と責任感がわいたプロジェクトだとも言えますね」

ー西武鉄道としても初めての試みもたくさんありましたよね?

稲葉「そうですね。電車内の袖仕切板や駅名看板の装飾、待合室のデコレーション、駅構内のフォトスポットの常設、たまご型の乗車券の制作……などなど、前例のない試みを実施する際は、実現のためにどの部署へどのようにはたらきかければいいのか、とても悩みました。しかし、こちらの意図を明確に伝え、懸念していた点をひとつひとつクリアしていくことですべて無事に実施することができました」

椅子も中吊り広告もアニメーションも、ぐでたま一色!

装飾シールも中づり広告もアニメーションも、ぐでたま一色!

待合い室もさりげなくぐでたまデザインに

待合室もさりげなくぐでたまデザインに

ーやはり新しいチャレンジには魅力を感じますか?

稲葉「はい!以前車掌をしていた際、乗務所の上司からいただいた『現状維持とは衰退と同じことである』という言葉が常に心に残っていて。時代が変わりつつあるいま、現状に甘んじているだけでは取り残されてしまう。だから新しいことにどんどん挑戦して他社との差別化をはかり、お客さまに選んでもらえる鉄道会社にしていきたいと思いました。そのとき感じたことはいまでもわたしの原動力になっています」

04

みんなの想いが具現化した
ラッピング車両

みんなの想いが具現化した

ラッピング車両

ー今回の企画で特にこだわって取り組まれたことはなんですか?

稲葉「黄色い30000系『ぐでたまスマイルトレイン』には大変思い入れがあります。わたしの所属する運輸部 スマイル&スマイル室とサンリオさんが車内外のラッピングデザイン、Smileビジョンのアニメ、中づり広告のデザインなどを担当し、ラッピングに関する実務的な作業や手続きは沿線事業企画部の広告担当と車両部にお願いしました。こうしてたくさんの部署の関係者やサンリオさんの全面的なご協力のもとで実現した車両ですから、完成時の感動はひとしおでしたね」

ーそのラッピング車両には遊び心のある仕掛けがあるとか?

稲葉「そうなんです。今回、なるべく多くの方に見て・乗っていただきたいという思いから、豊島園駅や西武秩父駅、西武遊園地駅までの運行も可能な8両編成に決めたのですが、池袋線ではそれに2両加えた10両編成での運行も多いため、2両が増結すると隠れてしまう前面を『ぎゅでちゃま』というキャラクター(『ぐでたま』がやる気を出したときの顔)のデザインにしてレア感を演出しました。そして『ぎゅでちゃまに会えたらラッキー!?』というストーリーをつけ加えたところ『今日は8両編成でぎゅでちゃまが見れた!』『10両編成で隠れてた!!』などお客さまの反応も上々で、『ぐでたまスマイルトレイン』を発見したときの楽しみのひとつとして貢献できたかな、と思っています」

会えたらラッキー!?ぎゅでちゃま車両

会えたらラッキー!?ぎゅでちゃま車両

スマイルビジョンで西武線沿線の魅力をご紹介

スマイルビジョンで西武線沿線の魅力をご紹介

05

キチンと×ゆるさの
ミスマッチがおもしろい!

キチンと×ゆるさの

ミスマッチがおもしろい!

ー今回のキャンペーンが反響を呼んでいる理由はどこにあると思いますか?

稲葉「規律を重んじ、1分1秒を大切にしながら電車を運行している西武鉄道と、ぐでぐでとしたやる気のないキャラクターという、一見正反対で相容れない両者がコラボしたことで、お客さまに斬新さや驚き、ちょっとした話題を提供できたのではないかな、と感じています。実際、通勤電車や、急行などの優等列車が『ぐでたまスマイルトレイン』だと、SNSでのお客さまの反応もおもしろいんです。また、運行がランダムなので『撮り鉄泣かせの車両』とも言われているようで。しばらく運行に入っていないと『ぐでたまだけにやる気ねーな』なんてコメントがアップされたりしています(笑)」

ー「ぐでたまスマイルトレイン」目当てにわざわざ足を運んでくれた方も多かったのでしょうか?

稲葉 「はっきりと数字を出すことはできないのですが、実感としてはありますね。しかし、そもそも周知されなければ話題になることもありません。その点、ここでも他部署の方々が協力してくださって。秩父の芝桜まつりやメットライフドームで野球の試合があるときなど、沿線外からの多くのお客さまの利用が見込まれるタイミングで運行に入れてもらったり、駅に『ぐでたま』のぬいぐるみを置いていただいたりと、PR という面でも社内のみなさんのバックアップがあったからこその結果だと思います」

多様なオリジナルグッズ

多様なオリジナルグッズ

キャンペーンを盛り上げる駅貼りポスター

キャンペーンを盛り上げる駅貼りポスター

06

肌で感じる
お客さまのリアルな反応

肌で感じる

お客さまのリアルな反応

ーご自身でもお客さまのリアクションはチェックしているんですか?

稲葉 「もちろんです!ホームで撮影してくださるお客さまもたくさんいらっしゃいますし、玉川上水駅の改札前のフォトスポットに設置したぬいぐるみは、みなさまにかわいがってもらいすぎて変色してしまい、いまいる子は実は2代目だったりします(笑)。また、駅構内のベンチのタイプのフォトスポットでは、缶ビール片手にサラリーマンの方がぐでっと座っていたり、男子高校生がワイワイ記念撮影をしていたり……。『ぐでたま』は老若男女に愛されているのだな、と改めて実感しました」

ーそういったお客さまを見かけてどう思いますか?

稲葉「素直にとてもうれしいですね。わたしは小さなころから西武線沿線で育ち、お世話になった西武鉄道をより盛り上げてたくさんの方々に笑顔になっていただきたい、という想いで入社しましたので、自身が携わったイベントによって多くのお客さまが喜んでくれる姿を見たときは感無量でした。まだまだこれからの若輩者ですが、今回のイベントでひとつご恩返しができたかな、と思っています」

ー社内、またサンリオさんの反応はどうですか?

稲葉 「みなさんとても協力的ですし、応援してくださっています。特にお客さまの反応やご意見を現場で見ている駅員さんが教えてくれるのは大変励みになります。また、時は戻りますが『ぐでたまスマイルトレイン』のデビュー運行時に、池袋駅のホームでサンリオさんの担当者の方をお見かけしたんです。夕方、本降りの雨で足元の悪い中わざわざ遠くまで足を運んでくださって……。車両を見つめるそのやさしい眼差しに『同じ気持ちでこの日を迎えていただいたんだな』と、涙腺が刺激されたものです」

ちょこんと顔を出すぐでたま。キュート!

ちょこんと顔を出すぐでたま。キュート!

こどもに大人気のフォトスポット

こどもに大人気のフォトスポット

07

12月に向けての
ラストスパート!

12月に向けての

ラストスパート!

ーそれから半年、今回のキャンペーンも後半戦となりましたが、そこにかける稲葉さんの想いを聞かせてください。

稲葉「早いものでもう折り返し地点を過ぎてしまいましたが、最後まで『スマイルトレイン』『ぐでたま』そして『西武鉄道』をみなさまに愛していただけるようにがんばってまいりたいと思います。スマートフォンのアプリで『ぐでたまスマイルトレイン』の運行状況を確認することができるので、この3ヵ月でみなさまにもっと見て・知っていただいて、最後は惜しまれつつ引退……というように、有終の美を飾れるようにしたいです」

ーいろいろとコラボグッズも発売しているんですよね?

稲葉「はい。過去2種類発売した記念乗車券は、特に初回は先行販売分が即日完売、一般販売分も10日間で売り切れになるなど、合計6000枚が完売となりました。また、グッズ販売ではありませんが、8月31日まで実施した『ぐでっと “ぐでたま” 西武線スタンプラリー』も多くのお客さまがご参加くださり、ご好評をいただきました。そして、8月25日からは、玉川上水駅と石神井公園駅西口のトモニーで新たに数量限定でキーホルダーを2種類発売しています。

※取材当時のものです。無くなり次第、発売終了。

スタンプは9駅に設置

スタンプは9駅に設置

6駅ぶん以上押すと達成賞をプレゼント

6駅分以上押すと達成賞をプレゼント

08

みんなの力で見ることができた
壁の向こう側の景色

みんなの力で見ることができた

壁の向こう側の景色

ーさまざまな経験のなかで得たものを教えてください。

稲葉「『何事も諦めずに、チャレンジあるのみ』ということですね。このキャンペーンを実施するにあたり、時間的・規則的な制約など、越えなくてはならない壁に何度もぶつかりました。しかし、諦めずに情熱をもって進んでいけば周りの方々もそれを感じて力になってくださり、突破できるのだということを身をもって実感しました。一見高すぎるように思える壁も、小さく、細かく分解していけば、きっとクリアできる、と信じています」

ー今後、かなえたい夢や目標はありますか?

稲葉「今回は『ぐでたま』というキャラクターを活用したキャンペーンでしたが、西武線沿線そのものの魅力もみなさんにもっと詳しく知っていただき、これから先もさまざまな施策を通じてより多くの方に西武鉄道を利用し、笑顔になって、そして好きになっていただけたら本望です。また、お客さまだけでなく『この会社で仕事をしていてよかった』と思ってもらえるような、社員のみなさんにも喜んでいただける企画を打ち出せたらと思っています。そして、今回のキャンペーンでは社内外問わずたくさんの関係者の方々にお世話になったので、今後何かで自分がお役に立てることがあったら、率先してみなさまのお力になれる人間になりたいです」

稲葉 久美子

Vol.2 Profile

稲葉 久美子(イナバ クミコ)

運輸部 スマイル&スマイル室
2015年 入社

※所属等は、取材当時のものです。

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