Vol.6 「西武秩父線開通50周年!進化する秩父のいまむかし」
今年開通50周年を迎えた西武秩父線。
10月14日(月・祝)には「西武秩父線開通50周年記念セレモニー」を開催、さまざまなイベントが大盛況に終わりました。また同時に、開通時に運行していた101系の記念運行や「西武秩父線開通50周年記念乗車券」など、2019年は地域の方にとっても西武鉄道にとっても喜ばしいメモリアルイヤーになりました。
今回お話を伺ったのは、入社42年のベテラン、佐藤徹夫(サトウテツオ)さん。西武秩父~武蔵横手駅間を管理する西武秩父駅管区長として多忙な日々を送る佐藤さんですが、生まれも育ちも秩父という生粋の秩父人。開通50周年という節目に、過去と現在、そして未来にどのような想いを抱いているのでしょうか?

これまでも、これからも、ずっと。
西武秩父線開通50周年
西武秩父線は1969年の運行開始から今年で50周年を迎えます。
これまでも、これからも、ずっと。
すべてのお客さまとともに、未来へのレールを走り続けます。
Index
一番の仕事は
所属員のフォロー

―佐藤さんの現在の業務内容を教えてください。
佐藤「西武秩父駅管区の管区長として、西武秩父駅から武蔵横手駅までの8駅、25.5kmを管轄しており、駅管区内で起こるすべての物事の責任者です。業務の処理や決裁、所属員の指揮監督など、業務内容は多岐に渡ります。イベント時は担当者にアドバイスをしたり、企画にGOサインを出したり。管区長になって今年で3年目を迎えます」
―管区長という立場で特に重きを置いている業務はなんですか?
佐藤「常日頃心がけているのが所属員の体調への気配りです。仕事だけでなく、所属員の健康状態を気にかけ、管理するのも私の仕事のうち。夜間作業もあるので身体に負担がかかることもあり、顔色の変化や、業務内容をチェックし、サインを見逃さないようにして声掛けしています。空いている時間で担当の駅を巡回するのですが、予告して行くと構えてしまうでしょうし、日常の様子を見たいので、抜き打ちで行っています(笑)」
忘れられない私鉄5社
相互直通運転

―これまでにどんなお仕事を手掛けてこられたのですか?
佐藤「駅のきっぷ切りに始まり、車掌、運転士、運転司令、乗務所といった現業での仕事から、ダイヤ担当、車掌・運転士を育てる養成所の専任教師など、さまざまな所属・役割を経験してきました。駅のきっぷ切りで改札に立っていたのは40年前の池袋駅。きっぷ切りというと改札鋏をカチカチしているイメージですが、新人のうちは全然できなくて手が痛くなってしまって。慣れるとリズミカルにできるようになるんですよ。いまでさえテクノロジーの先端を行く池袋駅ですが、当時はまだ改札もホームも多くの駅係員で対応していました」
―強く印象に残っているのはどんなお仕事ですか?
佐藤「ダイヤ担当として5社相互直通運転に立ち会ったことです。ダイヤ担当とは、電車がどこからどこまで、どのくらいの本数で運行するのかを決める鉄道会社にとって根幹の担当。当初から難しいプロジェクトだと言われていましたし、各社の担当者もみんな各々の戦略に沿って組もうとするので、なかなかダイヤが決まらないんですよ(笑)。最後は話し合いの中で着地点を見い出したのですが、電車一本で山奥の秩父と海際の横浜をつなぐなんて、昔は夢にも思わなかったことが実現して感無量でしたね。開通当日は前泊して渋谷駅でのテープカットを見に行きました。私が行った仕事で各鉄道会社の車両があちこちを走っている、と感動しましたね」
西武秩父線の
いま・むかし

―西武秩父線が開通50周年を迎えましたが、どのような想いをお持ちですか?
佐藤「秩父市民の私にとっては、小学生のときに開通した西武秩父線は、通勤・通学の幅が広がる、なくてはならない路線でした。開通は、市民全員が喜んだ、画期的な出来事でしたね。いまでも当時のことをありありと思い出しますが、小学生だった私は、営業開始前に初めて西武秩父線に乗せていただいて…。それから縁あって西武鉄道に入社して節目の年に管区長でいられることは大変光栄に思います」
―開通50周年を迎えて沿線の街は変わったと思いますか?
佐藤「現在は昔よりも、行政も地元のお店もどんどん観光にきてもらおうという姿勢にシフトし、活気づいています。スローライフを志して移住してくる人々も増えて、いろいろな意味で街が活性化したのではないでしょうか」

西武秩父線開通式

現在の西武秩父駅ホーム
今なお実感する
秩父の魅力

―観光地として注目の秩父エリアですが、その魅力はどんなところにあると思いますか?
佐藤「都心から程よい距離でアクセスも良く、自然が豊かなところでしょう。私の好きなスポットは三峯神社。森のひんやり感が気持ちよく、マイナスイオンが溢れています。幾度となく足を運んでいますが、とても広いのでまだ足を踏み入れていないところもあるんです。パワースポットとして有名になったので、近年は若い女性の参拝客などもよく見かけますね。個人的な秩父のオススメのシーズンは秋。寺社の多い秩父ではお祭りも多いですし、紅葉が美しく、山が燃えるように鮮やかです。長瀞紅葉まつりのライトアップもとても綺麗ですよ」
―秩父エリアには見どころがたくさん詰まっているのですね。
佐藤「観光地だけでなく、豚みそ丼やわらじカツ、そばやかき氷などのグルメや、日本酒やウイスキー、ワイン、ビール、焼酎、どぶろくなど地元のお酒が豊富なところも魅力だと思います。私はお酒が好きで秩父で醸造したウイスキー『イチローズモルト』や秩父でとれたぶどうを使ったワインなどをよく飲むのですが、ひいき目を抜きにしても本当においしいですよ。『西武秩父駅前温泉 祭の湯』にある『酒匠屋台』の立ち飲み処では秩父のお酒をたくさん置いているので、好きな方はぜひ寄ってみてください」

オススメスポットの三峯神社

秩父で醸造したワインとウイスキー
街の活性化と
観光客の増加

―秩父に観光に来る人が増えたと実感することはありますか?
佐藤「もともと当社の有料座席指定列車『S-TRAIN』では季節ごとのイベントにお客さまが多くいらっしゃっていたのですが、先日テレビ番組で秩父が特集された際には、ゴールデンウィーク期間中ですが『S-TRAIN』が満席になったんです!こんなの初めてで…!また、最近では西武鉄道のテレビCMの影響か、若い方も目立ちますね。『Laviewに乗りたくてここまでやってきました』というお客さまもいらっしゃいますし、西武秩父駅の乗降者数も伸びています」
―近年、観光客が増えたのはなぜだと思いますか?
佐藤「特急電車や直通運転の充実、そしてメディア広告によって秩父の魅力を多くの人に知っていただけた結果だと感じています。西武秩父線開通50周年ということでいろいろイベントもありましたし。お客さまの生の声をヒアリングするために私はよくホームに立っているのですが、ご案内の際にきっぷを見ると横浜や自由が丘など、遠くからいらっしゃっているお客さまがとても多いことに気づきます。遠方からたくさんの方が来てくださるのは、直通運転があるからこそですよね。当時苦労してダイヤを組んだ甲斐がありました!」

新型特急車両「Laview」

有料座席指定列車「S-TRAIN」
秩父を堪能できる
玄関口へ

―『西武秩父駅前温泉 祭の湯』など駅施設のリニューアルで変化は感じましたか?
佐藤「まず雰囲気が全然変わりましたよね。2017年にグッドデザイン賞を受賞した黒いシックな駅舎は一見の価値があると思います。『祭の湯』がある場所は、以前は物産店が立ち並ぶ仲見世通りだったのですが、現在は温泉、物販、そしてフードコートと秩父のいろいろな側面が味わえる施設になりました。現在『祭の湯』には観光の方も、地元の方も、多くの人が来てくださっています。フードコートでは先ほど紹介したご当地グルメが、物販エリアの『ちちぶみやげ市』ではさまざまな秩父名物がお求めいただけますよ」
―佐藤さんおすすめの秩父名物はなんですか?
佐藤「先ほども言いましたが私はお酒が好きなので(笑)、やはり『イチローズモルト』のウイスキーや秩父産ぶどうのワインは外せません。お土産なら『しゃくしな漬』や『ちちぶ餅』。とってもおいしいです!また、実は秩父にはカエデがたくさん生えていて、メープルシロップの製造販売も盛んです。メープルを使用したお菓子は絶品です。お食事では個人的に好きなのはおそば。秩父にはおいしい蕎麦屋がたくさんあり、私も行きつけのお蕎麦屋さんがありますね」

地域に根差したデザインを高く評価された新しい駅舎

格子天井と行燈型照明の駅改札内コンコース

フードコート「呑喰処 祭の宴」

温泉エリア「祭の湯」露天風呂
更なる秩父の
飛躍を目指して

―西武秩父線は秩父鉄道への乗り入れや元町・中華街からの『S-TRAIN』などの直通運転で運行の範囲を広げていますが、西武秩父駅管区長として秩父エリアに期待する将来的なビジョンはありますか?
佐藤「都心からのアクセスがいいだけに、観光にいらっしゃるのは日帰りのお客さまが多いのです。なので、昼間はにぎわっていても夜は人気も少なく開いているお店も多くはありません。昼夜のギャップが大きいのです。ひとくちに秩父といってもそのエリアはとても広く、見どころもたくさんあります。ぜひ多くの方々に泊まりで来ていただき、秩父の魅力を存分に堪能していただきたいですね。また、広い秩父エリアを効率的に回れる観光バスなどがより一層充実すれば良いなとも思います」
―そのために何かチャレンジしたいことはありますか?
佐藤「これまでは交通、自治体、そして旅館組合との間に強いつながりがなく、各々の立場で頑張っているという印象がありました。しかし、それぞれの立場からの見方やこうなってほしい、こうしたいという要望は腹を割って話さなければわかりません。積極的に話し合いを行うことで、西武鉄道、観光事業に携わる人、農園を営む人など、皆で一体となって秩父を盛り上げていければと思います」
次の世代に
つないでいきたい想い

―今後かなえたい目標や夢はありますか?
佐藤「もうすぐ定年なのですが……(笑)。あと3ヵ月で退任しますので、これまでの取り組みを次の人につないでいけたらいいなと思います。入社してからの42年、振り返ればあっという間でしたが、人と巡り合って助け合ってきたからこそのいまがあるように感じます。街の人と、部署の人と、これまで通り仲良くして、テレビCM放映などで注目されているこのチャンスを逃さないよう残された時間も頑張りたいと思います。そして無事引き継ぎが終わって時間ができたら、いつもおいしいワインを飲ませてもらっている農園さんのお手伝いをしに行こうかな?」
―西武鉄道をご利用されるみなさまにメッセージをお願いします。
佐藤「現在、秩父エリアは観光に力を入れていますが、西武秩父駅管区長として地元民として沿線地域の皆さまに安全輸送を提供するのが一番の務めだと考えております。昔をご存知の方からすると西武鉄道の車両もずいぶん変化したように思うでしょう。鉄道も時代とともに進化していきます。今後も西武鉄道をよろしくお願いいたします」
関連リンク

Vol.6 Profile
佐藤 徹夫(サトウ テツオ)
運輸部 西武秩父駅管区長
1978年 入社
※所属等は、取材当時のものです。
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