西武鉄道社員がかなえたい

あれもこれもストーリー

Vol.7 「20年以上愛されるウォーキング&ハイキングのヒミツ」

西武鉄道沿線を中心に、ほぼ毎週実施されている西武鉄道のウォーキング&ハイキング。気軽なハイキングから登山まで、さまざまなレベルのコースで四季折々の散策を楽しむことができ、近年は西武線沿線の駅をスタート地点とし、沿線外のスポットをコースに取り入れるなど新しい取り組みもご好評をいただいています。参加者数も年々増加し、約7割がリピーターのお客さま。20年以上多くのお客さまに愛されています。


今回お話をお伺いするのは年間約100本の企画制作・運営に携わる山崎孝行さん。20年以上愛されるウォーキング&ハイキングにはどのようなヒミツがあるのでしょうか?

ウォーキング&ハイキング

西武線沿線には、豊かな自然や歴史を楽しめる、多くのハイキングコースがあります。ウォーキング&ハイキングでは、そんな沿線を舞台に、参加するとさまざまな特典がもらえるイベントを日々開催しています。お子さまからご年配の方まで、どなたでも気軽にお楽しみいただけますので、沿線の新たな発見・感動を探しに、ぜひお出かけください!

01

異色の経験を活かす

―山崎さんの現在の業務内容を教えてください。

山崎「企画に始まり、パンフレットの制作やコースの選定、そして前日の準備、当日のイベント運営、さらに終了後にはデータの収集・分析……と、ウォーキング&ハイキングに関するすべての業務を多岐にわたって担当しています。コースの下見や実際のイベントで日ごろは外に出ていることが多いので、デスクで仕事ができるのは週に2日くらいですね」

―これまでにどんなお仕事をされてこられたのですか?

山崎「1979年に入社してから6年間はアイスホッケー部の選手だったんです。そして現役引退後に西武トラベルに5年間勤務し、各地の観光について学びました。それから再び西武鉄道のアイスホッケー部に、今度はマネージャーとして参画。対戦スケジュールを組んだりイベントを運営したりが主な仕事でしたね。その後、アイスホッケーのアジアリーグの運営委員会の部長を務め、2006年に当時の運輸部営業課に配属。現在は運輸部スマイル&スマイル室と西武鉄道サービスイベントセンターで兼務をしております。選手時代に鍛えた体力、観光業の経験、そしてマネージャー時代に培ったスケジューリング能力が現在の業務にそのまま活きているとも言えますね」

02

ウォーキング&ハイキング

との出会い

―ウォーキング&ハイキングに携わる経緯について教えてください。

山崎「担当になってからは10年くらいですが、私が配属される10年以上前から、ウォーキング&ハイキングは運営されていました。配属当時は上の方々が受け持っていたのを、上司が多忙だったことから少しずつ手伝っていたら、だんだんその比率が上がっていき、実踏・現地調査・各社会議にも参加するようになり…いつの間にか正式な担当になっていた、という感じですね。もちろん、適性はあったのだと思いますし、意識はしていませんでしたが、私の性格上自分からも『やりたい』というアピールはしていたのかもしれません(笑)」

―実踏や現地調査では本番のコース距離をそのまま歩くのですか?

山崎「そうですね。日に15kmくらいは歩いているかな。週に100km歩く時もありますが、全然苦にはなりません。普通は翌日20km歩く、と考えるとプレッシャーになるらしいんですが、そんなことはまったくなく、遅刻も一度もありません! 小学4年生のときにアイスホッケーのクラブに入り、朝練もこなしてきましたが、考えてみれば小学生のころから親に起こされたことはなかったですね。毎日スッキリ目覚め、今日もイベントで約6km、軽く歩いてきましたよ!」

03

お客さまに安全・安心な

コースを提供する

―どのような基準や想いでコースを選定されているのですか?

山崎「『安全・安心に楽しんでいただけること』『西武線沿線の見どころを紹介できること』『沿線内外からお客さまに来ていただけること』の3つのポイントを柱にしています。ウォーキング&ハイキングには年間約11万人の方が参加してくださいますが、実際のところメットライフドームで野球などのイベントがあればそのくらいはすぐ到達してしまうんです。しかし、コツコツと毎月ファンを増やしていこう、というのがモットーですね。また、参加されるお客さまの年齢層を意識し、その年代に合わせたスポット選びをすることも意識しています。自分が行きたい場所、というのもさりげなく盛り込んでみたり(笑)。飯能~西武秩父駅間には全駅にハイキングコースが昔からあるのも西武線の特徴であり、そういったところも知っていただけるように工夫していますね」

―安全・安心についてはどのような対策をとられているのですか?

山崎「まずは現地調査のときに、交差点や交通量の多い場所、歩道が狭い場所、そして野生動物に遭遇しそうなところなどをピックアップして当日お配りするマップに注意ポイントとして記載しています。また、長年やっていると、お客さまの歩き方を見ただけでお客さまの体調がわかるんです。体調が優れない方は特に注意して見守るようにして、いざとなれば車に乗っていただくことも。イベント中はとくに気配り・目配りを心掛けて、できる限りお客さまに寄り添って誘導したり、お声がけをしたりしています」

お客さまには当日マップを配布

04

秩父の名所を体感してほしい!

熱い想いでコースを企画

―思い入れのあるコースやエピソードがありましたら教えてください。

山崎「『日本二百名山 武甲山に登る!』というコースですね。武甲山は秩父のシンボル的存在で、私もいつも電車から眺めておりました。個人的に登山したこともあるのですが、その体験が素晴らしいものだったので、これはぜひみなさんにも歩いていただきたいと企画しました。武甲山は標高1,304m、ハイキングコースは4kmほどでしたが、5年前に発案した当初は社内でも『ケガ人が出るからやめなさい』と反対されていたんです。でもあの手この手でプレゼンをして、安全・安心のために具体的な策を講じて『そこまで言うならやってごらん』と、応援していただけるようになりました」

―登山の引率は大変そうですね。

山崎「武甲山登山口 表参道まで送迎する有料イベントだったので、その緊張感もありましたが、全員下山されたかのダブルチェック作業が何より大変でしたね。なにせ800名の参加者の名簿をスタートとゴールで一人ひとり照会するという、現場での手作業でしたから。ハイキング自体はみなさま楽しんでいただけて、非常にご好評をいただいたので3年ほど続けましたよ。もちろん、下見も毎回登山ですが(笑)。そのときではないですが、下見中に山で猪に遭遇したこともあります。私ではなく同行していた方が追いかけられてしまって。バッグを捨ててもなお追ってきて、あと15cmでおしりに届く……! というところでその方が右に曲がり、猪はそのまままっすぐ走り去っていきました。まさに猪突猛進、ですね」

05

お客さまの目線に立ち

積極的なコミュニケーションを

―開催当日にはどのようなお気持ちで臨まれていますか?

山崎「前日から気持ち的にはスタートしていますね。備品のチェックやコースなどの再確認、そして当日の天気や気温、風速などの確認…。雨が降っても安全が確認できれば、基本的には開催します。また、当日はなるべくお客さまにストレスが発生しないように、ということも心掛けています。お客さまはストレス発散のために歩きにいらしているわけですから」

―どのようなことがお客さまストレスになるのでしょうか?

山崎「スタートの際に列をつくって並ぶとか、ハイキング中はすぐ後ろをほかの人が歩いているとか……。考えられることはいろいろありますが、そのひとつひとつを解消できるように気をつけています。スタート前にお客さまが並ばれているときはほかのスタッフと声がけをしながら待ち時間が少なくなるように、または待ち時間が具体的にわかるように配慮したり、コースは幅の広い道を選んだり。ストイックに歩きに来る方、景色を見ながらゆっくり歩きたい方、歩きながらのおしゃべりを楽しみたい方…。お客さまのニーズはさまざまですので、みなさまに満足していただけるよう、積極的なご挨拶とコミュニケーションを心掛けています。リピーターの方々とは顔見知りになり、おやつのおすそ分けをいただくこともあり、そのような関係性を築けていることが大変うれしいです」

06

挑戦できる環境が

目標達成につながる

―そのほか、お客さまに楽しんでいただくために導入した施策などはございますか?

山崎「西武線沿線だけでなく、沿線以外にも出かけていただければと思い、靖国神社など沿線外の見どころもうまく組み込むことでお客さまを飽きさせないコースづくりを心掛けています。ご年配の参加者も多いということで、土日開催が多かったのを平日にも広げました。ウォーキング以外にも、太極拳のイベントを始めたり、また“ポイントDay”という企画を始めたのも私です。『西武沿線ポイントカード』というものを発行し、対象イベントに参加してポイントを貯めるとPASMOにチャージができるポイント引換券を手に入れることができる、というもので、この制度を始めたことにより、3割以上お客さまが増えましたね。参加特典のスタンプカードや、SEIBU PRINCE CLUBのプリンスポイントとの連携も好評をいただいております。」

―そういった工夫によって参加人数が目標値を超えて増加しているんですね。

山崎「一番の要因はお客さまのために会社がバックアップしてくれていること、そこに尽きます。私のわがまま(?)な企画を通してもらっているので。また団塊の世代にターゲットを絞ったこともお客さまを増やせた一因かなと思います。事前申し込みも必要なく、平日でも思い立ったときに参加できる気軽さも良いのでしょうね。リピーターのお客さまも多いので、お客さま同士でも輪が広がり『久しぶりね』『次はどこのハイキングに参加するの?』なんていう会話を耳にすることも。純粋にうれしいですよね。また『パンフレットの次号はいつ出るの?』というお問合せも多く、みなさま楽しみに待っていてくださるのだなと感じます」

西武沿線ポイントカード

スタンプカード

07

チャレンジを支える

協力と応援

―ご自身にとってウォーキング&ハイキングの担当はどのようなチャレンジとなりましたか?

山崎「普通、こういった企画は沿線内で完結することが多いのですが、西武線沿線以外のコースも数多くご用意し、他の鉄道会社や自治体とのコラボレーションを図っていることが新しい試みとなっています。コースのある区役所に申請をしに行ったり、オススメの散策コースを伺ったり。共同開催で“協働”“協同”しています。そういった枠に捉われない考え方を身につけられたこと、また社内の協力を得るために自分も努力し、応援してもらえるようになったことは何よりうれしいことです」

―ウォーキング&ハイキングをご担当されたご経験のなかで得たものを教えてください。

山崎「『でかける人を、ほほえむ人へ。』というスローガンのもと、常にそれぞれのお客さまのことを気遣っていますが、実のところは、お客さまが元気に出かけて笑顔で帰って行かれる、その姿や『ありがとう』という言葉に私自身がとても癒されているのだと思います。楽しんで仕事をしながらお客さまから癒しもいただいて、これは役得かな(笑)。また少し話は変わりますが、やはり大人数で歩くというイベントの特性上、コース近隣の方にご迷惑をおかけしてしまうこともあります。そんなときはすぐに自分で直接行けるときは謝りに伺います。責任者が誠意をもって謝罪することで想いが伝わり、ご納得いただけることもあります。どんなときにも素直に心を表現することが大切なのだなと感じました」

08

ねがいは『ワンチーム』

そしてお客さまの健康

―今後かなえたい目標や夢はありますか?

山崎「グループ内での送客を増やすことです。今回のウィークデーハイキングに参加された方には西武グループの和食レストラン『ななかまど』のお食事割引券をお配りしました。イベント当日だけでなく、期限内ならいつでも使える割引券です。こうやってイベント自体にも付加価値をつけると同時に、どんどんお客さまに西武グループの魅力をPRし、ご利用いただけたらうれしいですね。昨年、ラグビーのワールドカップで日本中が沸き立ちましたが、そのように“ワンチーム”の精神で、ウォーキング&ハイキングだけでなく、会社全体、そしてグループ全体で盛り上がっていきたいと思います!」

―ウォーキング&ハイキングに参加されるみなさまにメッセージをお願いします。

山崎「西武線沿線は、自然豊かなハイキングコースはもちろん、街中にも花がたくさん咲いており、四季を感じられる場所がとても多いです。そういった沿線の魅力をハイキングを通じて再発見していただけたらと思います。そして、年齢を重ねると特に足腰の健康がとても肝心です。ウォーキング&ハイキングをきっかけに気軽に楽しく鍛えていただき、みなさまが健康でいてくださったら私も幸せです!」

山崎 孝行

Vol.7 Profile

山崎 孝行(ヤマザキ タカユキ)

運輸部 スマイル&スマイル室・西武鉄道サービス イベントセンター 兼務
1979年 入社

※所属等は、取材当時のものです。

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