地元の人々が「ここに住んでいてよかった」と思える場を。多目的スペース〈つむじ〉から発信する東村山の魅力とは。
相羽健太郎 西武線在住歴40年
出身は西武鉄道新宿線「小平」駅。2010年に義父から事業を継承し、代表取締役に。2016年に〈つむじ〉をオープン。
「東村山っておもしろいね!」と思ってもらえるために建設会社ができること
「相羽建設」は創業して今年で49年目。相羽健太郎さんは今から10年前に義父から事業継承し、代表取締役になりました。就任して真っ先にしたことは、スタッフ全員とともに経営理念を定義し直すことと、事業を拡大するために事業所の地域を広げるのか、あるいは地元にどっしりと根付いた仕事をしていくのか質問することでした。スタッフみんなの答えは「地元・東村山で働きたい」。働き方が定まったことで、経営理念はスムーズに「つながる人すべての暮らしを豊かにすること」に決まったそうです。
「スタッフの意見を参考に、地域の人たちとの関わりを今まで以上に大切にしたいと考えるようになりました。でも、建築会社とか工務店って用がないと入りにくいんですよね。いくらこちらが地域の人たちと仲良くしたくても、変わらないといけない。どうすればいいか悩んでいる時に、子どもの頃、親に『友達になりたいなら、自分から開いていかないといけないよ』と教わったことを思い出し、地域の人たちが気軽に集まれるような、コミュニティの場を作ることに決めました」
そして、3年前にオープンさせたのが〈つむじ〉でした。造園家の小林賢二さんが手掛けた緑豊かな庭園に、建築家の伊礼智さんが設計した住宅サイズのモデルハウス「i-works2015」、家具デザイナーの小泉誠さんが設計した小さな居場所「舎庫(しゃこ)」、同じく小泉誠さんが空間デザインを手掛けた土間のあるモデルハウス「3階建て木造ドミノ住宅」……と、個性豊かな3軒の建物が並びます。どの建物も一般の方が自由に入れる開かれた空間で、「3階建て木造ドミノ住宅」では、料理教室、撮影会、いけばなレッスンなどさまざまなイベントが開催されています。
「東村山という土地は、もともと住んでいた人は2割程度で、あとは他の地域から移り住んできた人たちです。いわゆるベッドタウンなんですね。ここで家を造って売っている以上、この東村山という土地に愛着を持ってもらい、おもしろいと思ってもらわないといけない。その点も意識して〈つむじ〉を作りました。たとえば、よそから来てここに友だちがあまりいないサラリーマンの方と、ずっとここで暮らしているおばあちゃんが仲良くなれる場になってくれたらと」
地域の”ハブ”として地元の農家さんや作家さんを応援できる場に
東村山には代々農業を続けている農家さんが多い一方、新たに移り住んできた若手作家さんたちも多く暮らしています。彼らの交流の場としても〈つむじ〉は一役買っているそう。
「『家で制作活動をしたいので、自宅をリフォームしてほしい』といったオーダーが入ることが増えてきて、この街には若手作家さんたちがたくさん暮らしていることに気づきました。都心からこちらに引っ越してきた人がほとんどで、つながりを求めているんですよね。彼らと、もともとここで農業している人たちをともに応援できる場として、毎月第一土曜日に『つむじ市』というマルシェを開催しています。生産者さんや作家さんたちには、『地元の人たちと顔が見える関係性を築ける』と喜ばれています。また、新鮮な野菜や素敵な器が気軽に手に入る場所を提供できることで、地元の人たちの暮らしも豊かになっていくとうれしいですね」
〈つむじ〉を拠点としてはじまった活動によって、点が線や面になっていく
〈つむじ〉で、さまざまなワークショップやマルシェなどを続けてきた結果、地元の人たちとの関係性が深まってきたと話す相羽さん。一つひとつ小さな点だった活動が面になっていく、手応えを感じているそう。
「〈つむじ〉には地域にひらくためのきっかけとして、大工さんが作ってくれた『無人販売所』が置いてあるんです。そこで植木を販売していたら、高校生が『お母さんの誕生日にプレゼントしたい』と買いに来てくれたことがあって。それこそ高校生にとって建築会社なんて縁遠い存在じゃないですか。それなのに、わざわざ〈つむじ〉に来てくれたのに感動しちゃって。先代には『お前は、仕事しないで遊んでばかりいる』って言われているんですが(笑)、無駄じゃなかったんだなってうれしくなりました。毎年秋には、『つむじ、暮らしの文化祭』もありますし、これからも地元の魅力を発信し続けていきたいです」
今回ご紹介した「相羽建設」の〈つむじ〉について
■住所:東京都東村山市久米川4-34-6
■電話:090-2327-7884
■営業時間:(平日)11:00〜15:00 17:00〜LO22:30(土日祝)11:00〜 LO22:30
■定休日:水・木
■公式サイト:http://tsumuji.life/
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(photo:Kenji Mimura,Misa Nakagaki text:Marie Takada)