
「人付き合いに疲れたらうちに寄ってほしい」。静かにゆっくりと過ごす空間を提供してくれるジャズ喫茶〈ロンパーチッチ〉。

齊藤外志雄さん・晶子 西武線在住歴13年
結婚を機に、新井薬師前駅周辺に移住。2011年、ジャズ喫茶〈ロンパーチッチ〉を開業。
開業のきっかけは、東日本大震災。新井薬師前で理想の物件に出合う。

新宿線「新井薬師前」駅からJR「中野」駅方面に向かう小道にある、ジャズ喫茶〈ロンパーチッチ〉。近所で働く人がふらっとランチを食べに来たり、仕事帰りの人がワインを一杯飲みに寄ったり。ジャズ喫茶と聞くと敷居の高そうなお店を想像してしまいますが、〈ロンパーチッチ〉はジャズに詳しくない人にも等しくひらかれた居心地のいいお店です。
オーナーである外志雄さんと晶子さんは、それぞれ会社員として、日々忙しく働きながらも、いつかは二人の共通の趣味である、ジャズを流す小さなお店をやりたいと思っていました。その“いつか”が動き出したのは、2011年3月に起きた東日本大震災でした。

「前々から二人でジャズ喫茶をやりたいねと話していて。店をやるなら今住んでいるこのあたりがいいな、と漠然と考えていたんです。けれど、結婚してしばらくは『いつまでに』なんて具体的なビジョンは持たず、会社員をなんとなく続けていたんですね。でも、あの大震災を経験して『イヤイヤ会社員を続けていてもしょうがない。どうせ死ぬならジャズ喫茶をはじめたい!』という意識に変わったんです」(外志雄さん)
そんな思いが通じたのか、さん夫妻はほどなく理想の物件に出合うことに。
「ボーナスをもらってから辞めるはずだったのに、もうここしかない!と、すぐに会社を辞めて契約してました(笑)」(晶子さん)
「普通においしくて、普通に通いやすい店」が理想。

二人がジャズ喫茶を始めるにあたり、決めていたことがあります。それはお客さまとジャズ談義はせず、できる限り静かな空間にするということ。
「ジャズ好きの人って、語りたがりなんですよね(笑)。これは、何年のどこどこで演奏したもののレコードだとか、なんとか。でも、僕自身そういった雰囲気の店が苦手で。常連さんでも初めて来た人でも、誰にとっても居心地のいい空間を作りたかった。このお店はいつでも静かだよ、と約束していたいんです」(外志雄さん)

あえてカウンターを高くして、お客さまとあまり目が合わないような造りに。お店で流れる音楽を聞きながら、ゆっくり読書をしたり、スマホを眺めたり。ここではお店の人の動きや視線を気にすることなく、思い思いの時間を過ごすことができます。コーヒーは外志雄さんの担当、お店の料理やケーキは、晶子さんの担当です。

「お食事と飲み物で1,000円ちょっと位と、通ってもらいやすい値段設定を意識しています。どこかで修業したわけではないので、もっと美味しいお店はあると思うけど、うちならではの満足感を得てもらえるよう、例えば、コーヒーや、ウイスキーは多めに注いで、お食事も特にLサイズはたっぷり。ガトーショコラに入れるチョコレートや、ペンネのソース、ゴルゴンゾーラチーズなども、なるべく多めになど。つまり量ですかね」(晶子さん)
新井薬師エリアはお客さまの歴史に寄り添える街。

「新井薬師前」駅はJR「中野」駅からもほど近く、アクセス良好な街として人気を集めています。
「私たちもここに越してきてから3回引っ越しをしているんですが、全部この辺りなんです。都会っぽさもあり、郊外っぽさもあり、絶妙なバランスで。お客さまもそう思っている方が多くて、ずっとこの街に暮らしている方も多いですね。新婚だった二人が、子どもが生まれて、その子どもが成長して幼稚園生になって、といった家族の成長に触れられるのもこの土地特有なのかもしれません。もう少し都会だったら、子どもができたら引っ越したり、移り変わりが激しいと思うので」(外志雄さん)

「梅照院が近くにあるので、四季の移り変わりをつぶさに観察できるのも魅力ですね。お正月はたくさんの参拝客で賑わいますし、桜が咲く時期もとってもきれいです。大都会にはない、ほどよくのんびりとした雰囲気が、私たち夫婦にも合っていると思います」(晶子さん)

一人の時間を過ごしたくなったらぜひ〈ロンパーチッチ〉へ、店内に流れるジャズに耳を傾けながら、外志雄さんの淹れるコーヒーや晶子さんの焼いたケーキを堪能する時間は格別です。
【今回ご紹介した〈ロンパーチッチ〉について】

■住所:東京都中野区新井1-30-6 第一三富ビル102
■電話:03-6454-0283
■営業時間:11:00〜23:00(ランチ〜14:00)
■定休日:月曜日
■公式サイト:http://rompercicci.com
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(photo:Tatsuya Irie text:Marie Takada)