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新宿線
西武柳沢駅

子どもたちが立ち寄る場所。大人たちが交流を深める場所。駄菓子屋〈ヤギサワベース〉は、地域の社交場。

西武鉄道新宿線「西武柳沢」駅の駅前から伸びる柳沢北口商店街の、いちばん端っこ。平日の午後には子どもたち、夜には大人たち、そして週末には家族連れで賑わうここは、〈ヤギサワベース〉。グラフィックデザイナーの中村晋也さんは、”駄菓子屋“というアイデンティティで地域をつないでいます。
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中村晋也 西武線在住歴16年

家の購入を機に初めて西武線沿線へ。2016年、デザイン事務所と駄菓子屋を併設した〈ヤギサワベース〉をオープン。

ホームタウンを実感できる、ほどよい規模の街に移り住んで。

店内に飾ってあるレトロなおもちゃはご近所から寄贈されたものも。備品の多くも地域で出たお下がりを使っています。
店内に飾ってあるレトロなおもちゃはご近所から寄贈されたものも。備品の多くも地域で出たお下がりを使っています。

中村晋也さんが西東京市に引っ越してきたのは、家を購入したのがきっかけでした。

「生まれてからずっと住んでいた荻窪を起点に範囲を広げていって、条件の合う物件があったのがたまたま西武柳沢だったんです」

偶然の出会いでしたが、各駅停車駅ならではのほどよいローカル感、アットホーム感をすぐに気に入ったといいます。

「すごくよかったのが、駅前に八百屋や本屋、当時は金魚屋もあって。こぢんまりした商店が並んでいる様子にとても惹かれました」

店頭のガチャガチャはコスモス製。「“昭和の駄菓子屋”としての譲れないこだわりです」。
店頭のガチャガチャはコスモス製。「“昭和の駄菓子屋”としての譲れないこだわりです」。

しかし、越してきた当初、中村さんは都心に通勤していて、街との接点はありませんでした。朝早く出勤し、夜遅くに帰宅するため、閉まっている商店街を毎日通りすぎるだけで、街が動いているのを見たことがなかったのです。

それが変化したのは、お子さんが通う中学校の「おやじの会」に参加するようになってから。商店街の人たちと親しくなり、祭りで神輿を担ぐなど地域の活動にも参加するようになり、いつしか地域の人たちが集まれるような場所をつくりたいと考えるようになりました。そして思いついたのが、なんと駄菓子屋。

「毎年新商品も出ますが、自分が子どもの頃に買っていた駄菓子がまだ生産されていることに驚きます」と中村さん。
「毎年新商品も出ますが、自分が子どもの頃に買っていた駄菓子がまだ生産されていることに驚きます」と中村さん。

「そもそも駄菓子屋をやるのは、定年後の楽しみとしてあたためていたアイデアだったんですけどね」

そうして2016年〈ヤギサワベース〉が誕生。放課後に子どもたちが安心して過ごせる場所、夜は大人たちがお酒を持ち寄って集まれる場所。そしてそこは他ならぬ、自分の街で仕事をしたいといつからか思うようになっていた、中村さん自身の居場所でもありました。

いち個人として、いち生活者としての人づきあい。

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店頭には200種類以上の駄菓子とレトロなゲーム機。奥はテーブルと椅子が置いてあるフリースペースになっていて、子どもたちは学校帰りに、宿題をしたり遊んだり、思い思いに過ごします。中村さんはここで「駄菓子屋のおっちゃん」として子どもたちを見守りつつ、本業であるデザイン業に勤しんでいます。

「デザインの仕事は6割が企業の案件。4割が行政や個人店など、地域の案件です」

地域からの依頼の比重は年々大きくなってきているそう。この6月からは、地元のコミュニティラジオ局、FM西東京の取締役にも就任しました。

駄菓子のラインナップに大人も夢中になってしまうのは「仕入れの基準は子ども目線というよりも、僕の懐かしさ加減だったりしますから」。
駄菓子のラインナップに大人も夢中になってしまうのは「仕入れの基準は子ども目線というよりも、僕の懐かしさ加減だったりしますから」。

「これまでの仕事は、ひとつの仕事が終われば、そこで終わるのが通常でした。一方、地域の仕事はそうではありません。ここで知り合った人の紹介で、新しい仕事につながることも多いんです」

役職や肩書きが先立って案件ありきで出会うのではなく、まず同じ街に暮らす個人同士のつき合いから始まっている。利害関係とは違う人間関係が土台にあるからこそ、ご縁も広がっていくのでしょう。

仕事も遊びもシームレスなコミュニティ暮らし。

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「ベッドタウンの特性だと思いますが、この街にはいろんなジャンルのいろんな職種の人たちが住んでるんですよね。大企業の重役もいたりしますが、そういうことは、『おやじの会』や地域の集まりで話しているうちに、あとからわかることで」

普通に仕事で会っていたら越えられないだろう壁も、地域でははなから壁が取っ払われ、個人同士で平等につき合えるのがおもしろい、と中村さん。

「また、この商店街は駅から近いわりには地代が高くないこともあって、ユニークな個人店も増えてきています。古い街ではありますが、人口が未だ微増しているんです。若い人たちが新しくどんどん入ってきて、街が活性化していると感じます」

学校帰りに毎日立ち寄る子も。女の子のお客さまが意外に多いそう。子どもたちには「ヤギベ」「ヤギベエ」の略称で親しまれています。
学校帰りに毎日立ち寄る子も。女の子のお客さまが意外に多いそう。子どもたちには「ヤギベ」「ヤギベエ」の略称で親しまれています。

もちろん、中村さん自身も街を活性化させているひとり。このたび地元の友人たちと一緒にアパートを1棟丸ごと改造して、近所に新たな場所をつくりました。「大人の部活動」をコンセプトにしたレンタルスペースとして、〈まるさんかくしかく〉という名称で運用が始まったところです。

商店街を通勤路としてただ往復していた頃に比べ、「劇的に人生が変わった」という中村さん。中村さんのまわりでは忌憚のない近所づき合いが縦横に発展し、気持ちのよい循環が生まれていました。

今回ご紹介した〈ヤギサワベース〉について

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■住所:東京都西東京市保谷町3-25-15-1F
■電話:042-452-5905
■営業時間:14:00~18:00(日曜12:00~16:00)
■定休日:月曜、火曜
■公式サイト:www.yagisawabase.com

※2024/02/28時点の情報です。

photo: Jiro Fujita/photopicnic text: Mick Nomura/photopicnic

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鎌倉時代に創建された尉殿(じょうどの)権現は、明治政府の神仏分離政策の影響を受け、〈田無神社〉と改名。ご祭神は、雨と水と風を司る龍神様(級津彦命/しなつひこのみこと、級戸辺命/しなとべのみこと)です。
田無神社
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主祭神は、五穀豊穣、商売繁盛、縁結び、病気平癒などさまざまなご利益を授け、だいこくさまとしても知られる大国主命(おおくにぬしのみこと)。境内では五行思想に基づいて青、赤、金、白、黒の五龍神がお祀りされています。
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おみくじ処や舞殿、土俵、烏骨鶏の鶏小屋など、見どころの多い神社です。■住所:東京都西東京市田無町3-7-4 ■電話:042-461-4442  https://tanashijinja.or.jp/
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南口にあった〈麺や野口〉が2019年、〈鶏拉麺JIN〉として新規一転オープン。厳選した鶏ガラと「信玄どり」のもみじも加え、コクと旨みの強い「親鶏脂」を香味野菜と炊き上げたスープが自慢です。麺はオリジナルの中細ストレート麺。
鶏拉麺JIN
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塩、醤油、赤辛、鶏煮干し、季節限定の味噌や冷やしなど、それぞれの味にファンがついていますが、中村さんのお気に入りは「特製鶏白湯 醤油拉麺」(1,080円)。トッピングも充実しています。
鶏拉麺JIN
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キュートなロゴは中村さんのデザイン。■住所:東京都西東京市保谷町3-11-24 ■電話:042-460-6320 ■営業時間:11:30~15:00、17:00~LO22:30(※スープがなくなり次第終了)■定休日:水曜 www.toriramenjin.com
鶏拉麺JIN
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この地で生まれ育ち、一度はバッグメーカーに就職したという橋本直巳さん。量産品ではなく、あたたかみのある一点ものの鞄をつくるべく、靴職人だった父の店を継いで革小物の工房〈クラクフ〉として始動しました。
クラクフ
この地で生まれ育ち、一度はバッグメーカーに就職したという橋本直巳さん。量産品ではなく、あたたかみのある一点ものの鞄をつくるべく、靴職人だった父の店を継いで革小物の工房〈クラクフ〉として始動しました。
工房には店が併設されていて、来客があると作業の手を止めて接客する橋本さん。鞄のほか、財布やキーカバーなどが良心的な価格で販売されています。もちろんオーダーメイドも。
クラクフ
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「ものをつくる人だけあって橋本さんはアイデアマン。いつも頼りにしています!」と中村さん。■住所:東京都西東京市保谷町3-10-16 ■電話:042-461-0752 ■営業時間:10:00~20:00 ■定休日:不定休 www.krakow.jpn.com
クラクフ
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