地元野菜を使ったランチや手づくりおやつ。〈amica〉の温かな一皿がもたらす幸せ時間
守屋留美 西武線在住歴18年
東村山在住で、2016年に〈amica〉をオープン。街の人に愛される地域に密着したカフェとして日々営業中。
ここ〈amica〉は、ついふらっと寄りたくなる我が家のような場所。
店主の守屋留美さんがひとりで切り盛りするカフェ〈amica〉は、「花小金井」駅南口から歩いて3分の静かな住宅地にあります。6年前に、縁があってここに店を構えることになったそう。
「はじめは自宅がある新宿線の『東村山』駅で物件を探していましたが、理想的なところがなかなか見つからず、範囲を広げて探すうちに偶然見つけたのがここでした。直感的にいいなと感じて決めたんですが、落ち着いた街の雰囲気が『女性のおひとりさまがゆったりくつろげるお店』という〈amica〉のコンセプトにぴったり合った気がしています。いまではインスタグラムを見て遠方から来てくださる方もいらっしゃいますが、お客さまの多くは地元の方なんですよ」
次第に口コミで評判が広がり、お客さまの7割が常連に。そのほとんどが地元民という、地域に愛されるお店になりました。年齢層は20代から60代のマダムまで。その幅広さもこの場所の居心地のよさを物語ります。
〈amica〉は、イタリア語で「女友達」という意味。女性のおひとりさまが友だちの家に遊びに来るような感覚で気楽に過ごせるように、という思いから名付けられました。そのコンセプト通り、店内はオフホワイトと木のインテリアを基調にした、肩肘張らずにゆったりと落ち着ける空間です。
内装はパン屋カフェ〈ユヌクレ〉やカフェ〈手紙舎〉など、さまざまなカフェを設計してきた井田耕市さんが手がけました。守屋さんからのリクエストは、ホワイトカラーと木を使ってほしいという2つのみ。結果、守屋さんが趣味で集めているアンティークや雑貨とも相性抜群な内装に仕上がりました。なかでも目を惹くのは、ミシン台をDIYしたテーブル。
「ブルーのミシン台を使ったテーブルだけは、昔から持っていたんです。アンティークショップで一目惚れして購入したものの、自宅で何年も眠っていたんですよ(笑)。せっかくなので使おうと持ってきたら、井田さんから『カウンター席に使う板が余ったので、追加でミシン台を買ってもう2テーブル作らない?』と提案いただいて。いまではこの3テーブルが、お店のシンボルになっています」
守屋さんのセンスとこだわりは、もちろん料理でも光っています。もとはイタリアンの料理人として活躍していましたが、〈amica〉ではさまざまなジャンルの料理を楽しんでいるそう。
「調理師学校を経て、イタリアにも足を運んで勉強しながら、十数年前までイタリア料理店に勤めていました。ただ体を壊して辞めてから、10年ほど料理の世界から離れていたんですよ。でもあるとき、せっかく培ってきた料理の腕を生かしていきたいと考えるようになって。イタリアン以外の料理も作りたかったので、ジャンルに縛られない、かつひとりでも営業できるカフェという形で再出発することにしました。いまは自由気ままに料理する毎日が、とても楽しいです」
東村山の朝採れ野菜たっぷりのプレートランチ&自家製おやつ。
食事メニューは特製キーマカレーと週替わりのランチプレートの2種。特にランチプレートは、グリーンサラダと野菜のおかずが3品も乗ったボリューミーな内容で、野菜がたっぷり摂れると評判です。具だくさんなスープとイタリア仕込みの自家製パンナコッタまで付くというから、なんとも贅沢。
「家庭の食卓で一度にいろいろな野菜を取り入れるのは難しいので、ここで野菜をたっぷり食べていただけたら。プレートのおかずは野菜のみで作っているため、野菜本来の旨味を生かしながら中華風に味付けしたり、スパイスを効かせて中東風にしてみるなど、さまざまな国の料理をアレンジしながら工夫しています。スープで肉や魚の動物性のタンパク質も摂れるので、栄養バランスもばっちりですよ」
食べ切れるかな?と思うほどの量ですが、多彩な味付けといきいきした野菜の味わいに、手が止まらなくなります。そんな野菜は、東村山の地元野菜なのだそう。
「東村山には昔ながらの農家さんが多く、いろいろな野菜が作られているんですよ。朝採れなので新鮮かつ、旨味もたっぷり。足りなくなったらお店近くのスーパーで買い足すこともありますが、一度食べたらほかの野菜は使えないくらいおいしいので、基本的にはすべて東村山の野菜を使っています」
おやつメニューには、レギュラーメニューのスコーンのほか、国産フルーツを使ったタルトやケーキも数週間変わりで登場。なかでもスコーンは、こちらの名物。お菓子屋さんに行ったら必ず買うほどスコーン好きだという守屋さん、「レシピはとことんこだわり抜いた」と話します。
「オープン前から、スコーンは絶対に作ろうと決めていました。完成したのは、国産の薄力粉と強力粉、全粒粉を合わせて、ザクっとふんわりさせた通称“ザクふわ”スコーン。ジャムに合わせても、そのまま食べてもおいしいですよ」
この食感は、絶妙な焼き加減の賜物。提供する際はリベイクするため、バターと粉の香りがふわりと漂います。
「以前からおいしいと思っていたので、お店で扱わせていただけないかオーナーの井上さんに相談したんです。そうしたらここまで来て、仕入れを快諾してくださって。こうして振り返ってみると、たくさんの人たちに支えられていますね」
「年々進化する西武線沿線は、どこで降りても楽しい」。
「西武線沿線は暮らしていても仕事場としても、とても過ごしやすい」といいますが、ひとりで営業しているため、休みの日は仕込みと買い出しで1日が終わることもしばしば。
「最近はあまり遊びに出られていなくてうずうずしているんですが、各駅しか停まらない駅にも、年々個人で営業されている魅力的なカフェや雑貨店が増えているんですよ。目的地を決めずにふらっと降りても何かしらの発見があるので、この沿線からは離れられませんね」
西武線在住歴18年と、長い間暮らす守屋さんは「どの街も進化し続けている」と続けます。
「東村山は、私が暮らしはじめた18年前は畑や野原が多い地域でしたが、急行や特急が停まるようになってから、戸建てやマンションが増えて人の温かみを感じられる街になりました。その前に住んでいた池袋線『ひばりヶ丘』駅も、商業施設やスーパーがより充実して、若者やファミリーが暮らしやすい街になったなぁと感じています。ライフステージによって住み心地のよさを感じるポイントは変わると思いますが、西武線沿線は、さまざまな環境に対応できる街が点在しているので有り難いですね」
ここ花小金井エリアについては、「ほとんど店内にいるので、あまり街歩きはしないんですが」と前置きしつつ「駅の北口側に市役所やスーパーなどがコンパクトにまとまっているので、ひとりでもファミリーでも生活しやすい場所」と守屋さん。
「それに常連さんをはじめ、この街の人は落ち着いていて優しい。ひとりでやっているからピークタイムは仕事に集中するあまり硬い表情になることも多いんですが、みなさん何も言わずに待っていてくださって、いつも助けられています」
「とはいえ、食事やひとり時間のお邪魔になってはいけないと思い、私からお客さまに話しかけることはほとんどないんです。数年通っていただくうちに、お声をかけても大丈夫と分かったお客さまとお話しするくらい。なのでほとんどの方が寡黙な店主だと感じていると思います。実はぜんぜん、そんなことないんですけどね(笑)」
地元の人がこぞって通う居心地のよさは、こうした守屋さんの人柄があってこそ。人がひとつの街に住み続ける理由はさまざまですが、長く暮らす街に〈amica〉のようなお店があったら、思わず「ここで暮らしたい」と決めてしまいそうです。
今回ご紹介した〈amica〉について
■住所:東京都小平市花小金井南町1-19-27
■電話:070-4292-9323
■営業時間:12:00〜18:30(LO)
■定休日:月曜・火曜、ほか不定休あり(Instagram参照)
■公式サイト:https://www.instagram.com/amica_cafe/
※ご来店の際、いくつか注意事項がございますので、こちらの「amicaからのお願い」を必ずご覧の上、ご来店ください。
※2024/02/28時点の情報です。
(photo: Kaori Ouchi,Chihiro Oshima text:Wako Kanashiro)