
「ワインを通して東京産の野菜のおいしさを広げたい」。〈東京ワイナリー〉オーナーの人生を変えた、大泉学園の魅力とは。

越後屋美和 西武線在住歴5年
東京産のおいしい野菜に心を奪われて、横浜から移住。〈東京ワイナリー〉は今年で5年目。
東京のぶどうを使ってつくるワインを通して、東京の農業を知ってほしい。

農学部を卒業後、大田市場で野菜の仲卸しの仕事に就いていた越後屋さん。東京の野菜を東京の人に消費してもらう「都産都消」のプロジェクトに参加したことをきっかけに、東京の農産物に出会いました。
「もともとは横浜に住んでいたこともあり、東京の野菜をまったく食べたことがなかったんですよね。だから『東京の野菜って本当においしいのかな』なんて最初は半信半疑だったんですが、大泉学園にはじめて訪れた時に食べた練馬産のキャベツのおいしさにすっかり魅了されてしまって。そこから全国的にはまだまだ認知されていない東京産の野菜の魅力を伝えたいと思いはじめました」

その後、東京生まれのぶどう「高尾」のおいしさにも感動した越後屋さんは、もともとワインが好きだったこともあり、東京で初めてとなるワイナリーを始動させる道を選ぶことに。
「東京という土地柄、畑はそんなに大きくないんですが、みなさん手間暇かけて野菜や果物を育てていらっしゃるんですよね。丁寧につくられた東京の野菜をもっと知ってもらうために、自分ができることは何だろう、と考えた時、農産物ジャムやピクルスといった加工品づくりなども考えましたが、自分の好きなものをつくるのが一番だろうと東京産のぶどうを使ったワインづくりを選びました。ワインは農産物100%でつくるものですし、料理との組み合わせを楽しむものなので、東京の農業をアピールするのにぴったりじゃないかと思ったんですよね。『東京産のぶどうを使ったワインを飲みながら、同じく東京産の野菜を使った料理を味わう』そんな体験をみなさんにしてもらえたら、とワイナリーをはじめることを決めました」

野菜に関係する仕事に就いていたとはいえ、ワインづくりはまったくのゼロからのスタート。東京の野菜のおいしさに気づくきっかけとなった大泉学園に土地を借り、ワインを醸造する設備を整えていきました。
ワインづくりは、まわりの人の協力があってこそ。
2年間、山梨で修業をしたのち、池袋線「大泉学園」駅から徒歩10分ほどの場所に〈東京ワイナリー〉を設立した越後屋さんは、醸造から販売までを一人で担当。ワイナリーには醸造するスペースとは別に、ワインと一緒に料理を楽しんでもらえる飲食スペースもつくりました。

「ワインってもちろん技術も必要ですが、何より大切なのはおいしいぶどうです。農家さんあっての〈東京ワイナリー〉だと思っています。ワイナリーは一人で立ち上げましたが、農家さんたちはもちろん、ぶどうをつぶしたり、しぼったりという作業にもたくさんの方が協力してくれています。いろんな人を巻き込んで、楽しくやっています」

〈東京ワイナリー〉のワインは、練馬産のぶどうのみでつくる「練馬ヌーボー」(11月限定販売)や、東京各地で育った高尾ぶどうを100%使用したにごりロゼワイン、東京産のぶどうをいくつか組み合わせた「東京スペシャル」など、「東京産」にこだわったものが多くあります。
これらのワインは料理に合うように、すべて辛口。飲食スペースで提供される料理は、地元練馬産の野菜を使ったものばかり。ワインはもちろん、料理にも「東京の野菜の魅力を伝えたい」と願う越後屋さんの熱い思いが込められていました。
緑豊かで、気持ちがいい大泉学園だからこそ生まれるおいしさ。
「この街でお店をやっていて強く感じるのは、みなさん地元が大好きだということ。それって素晴らしいことですよね。都心までアクセスがいいうえ、緑が多く、畑が近くにある環境って他ではなかなかないと思いますよ」
越後屋さんは、地域の農家の方や飲食店の方たちと「ねりまワインプロジェクト」を今年からはじめました。「都産都消」だからではなく、おいしいから選ばれるワインの開発を目指しています。「この土地から、東京ワインをはじめとした東京産の農産物のすばらしさを発信し続けたいです」

今回ご紹介した〈東京ワイナリー〉について

■住所:東京都練馬区大泉学園町2丁目8−7
■電話:03-3867-5525
■営業時間:(販売・醸造所)11:00~17:00
(ランチおよびグラスワインのご提供)土日祝日のみ11:00~17:00
■定休日:水曜
■公式サイト:https://www.wine.tokyo.jp
※2024/02/28時点の情報です。
(photo:Kaori Ouchi text:Marie Takada )