“豊かな暮らし”を日々実感できる場所。器と雑貨のセレクトショップ〈copse〉店主が魅了された都会田舎、石神井へ。
小森知佳 西武線在住歴20年
引っ越しをきっかけに、石神井公園周辺ののどかな雰囲気に魅了され、9年前に〈copse〉をオープン。
住んでみて魅了された、都会なのに田舎のような自然を身近に感じられる環境。
20年ほど前から石神井に暮らしながら、中央線沿線に引っ越したいと考えていた小森知佳さん。石神井に長年暮らすことや、ましてやお店を持つなんて当初は考えてもいなかったそう。「公園の近くに住みたいと思っていて、でも希望するエリアになかなか予算が合う物件が見つからず。偶然、石神井公園の近くの物件に出合って、なかば『ま、いっか』という気持ちで石神井に根をおろすことになりました」
妥協にも近い気持ちで続けることになった石神井暮らし。ところが、新居に引っ越し、今まで知らなかった魅力に気づかされます。
「それまでは石神井公園駅の環八寄りに住んでいたのですが、同じエリアでも公園付近のことはよく知らなかったんです。ボート池の周囲だけが石神井公園だと思っていましたし。実際に住んでみたら、三宝寺池が気持ちのいい森に囲まれていたり、近所に農家がたくさんあって、即売所で採れたての野菜が売られていたりして、都会なのに田舎のような自然を身近に感じながら暮らせる理想的な場所だと思いました」
そうして石神井を気に入っていくと同時に、「こんなに環境がいいのに何かが足りない」と感じ始めた小森さん。
「素敵な店がたくさんある街なら、店を始めようなんて思わなかったはず。すでに街として満たされていますから。石神井が素晴らしい公園だけでなく、ほかにも立ち寄れるところがあればもっと楽しみが増えるのになって。それで、地元を少しでも魅力ある場所にしたい、石神井の魅力をたくさんの方に知ってもらいたいと店を始めました」
「井」で繋がる、ものづくりのコミュニティと絆。
毎年5月に開催されるイベント、「井のいち」に今年も参加した〈copse〉。「井のいち」の「井」とは、石神井、井草、井荻など水にちなんだ地名が多いこの地の総称。この地域で活動している作家や店主の作品の物販やワークショップ、地元で人気の飲食店も出店する街ぐるみの「市」は、住民たちが楽しみにしているイベントのひとつです。
「お店をオープンするとき、フリーペーパー『井』と『井のいち』を主宰する石神井町のギャラリー『knulpAA(クヌルプエーエー)』さんをはじめとする人々に出会えたことは、とても大きかったですね」
『井』に掲載されたことや「井のいち」への参加が〈copse〉を知ってもらえるきっかけになり、お店同士の横の繋がりや交流も生まれたそう。
「この地域には、いい街にしたいという思いを抱いて活動している人が多い。それぞれの活動が街の魅力になっている気がしますし、見えない絆でつながることができて私自身とても心強いです。お客さまも、地元に愛着を持っている方が多いですね」
ここに住み、店を営んで気づいた“豊かな暮らし”の本質。
店名の〈copse〉とは雑木林の意。小森さんのお店には、石神井公園の自然に寄り添うような、心地いい暮らしを演出してくれるアイテムが並びます。
「セレクトの基準は、私の好きなものであると同時に、ここの暮らしに似合う気持ちのいいもの。なるべく素材や独自の作風にこだわっている作家さんや、まだよく知られていないけれどユニークなものづくりをされている方にご紹介したいです。最寄りの大泉学園駅から少し離れていますが、わざわざ来てくださったお客さまに、『また来たい!』と思ってもらえるものを置こうと心がけています」
せっかく来てくれたなら、この街に流れる時間を感じてほしい。そんな思いから、ゆっくり過ごしてもらえるようにカフェ営業もしています。外のレトロな商店街の風景を眺めながら、のんびりと過ごす時間にほっこり心が和みます。
「もしかしたら同じ石神井でも、駅の近くと〈copse〉のように駅から離れた場所では、雰囲気や流れる時間もちょっと違うかもしれません。私の場合、自宅と店の間に公園があり、わざわざ出かけなくても常に公園が生活の一部になっています。野菜はスーパーで買わず即売所や農協で。採れたての野菜が買えるのはもちろん、並んでいる野菜を見るだけで季節の移ろいを感じられますし、それは、人も自然の一部として生かされていることを実感することにもつながります。そうしたことを日々感じられることが、豊かさではないかと思います」
今回ご紹介した〈copse〉について
■住所:練馬区石神井台3-24-39 ロイヤルコトブキ1F
■電話:03-6913-1544
■営業時間:11:30~17:30
■定休日:不定休(webカレンダーを要確認)※企画展中は無休
■公式サイト:http://www.copse.biz/
※2024/02/28時点の情報です。
(photo:Hiromi Kurokawa text:Ayano Sakai)