毎日のことだから、素直にゆっくり手をかけて。〈たべものや ITOHEN〉のおそうざいで、心落ち着くごはんの時間を。
高橋太郎・紗代子 西武線在住歴12年
東久留米市在住。ご両親とおそうざいを作っていた太郎さんとカフェを営んでいた紗代子さんが出会い、2013年、石神井公園で〈たべものや ITOHEN〉をオープン。
レパートリーは100種類以上!毎日の生活に寄り添う、おそうざい屋さん。
お惣菜屋を営むご両親とともに働いていた太郎さんと、カフェを営んでいた紗代子さん。2人が出会い、今までやってきたことを合わせてやってみようと。2013年〈たべものや ITOHEN〉は生まれました。
「みなさんそれぞれ、いろいろな生活をしていますよね。子育てしている方もいるし、働いている人もいれば、一人暮らしの方もいる。その人たちの毎日の生活に寄り添って、サポートしてあげられるような、そういうお店にしたいという気持ちがすごくありました。だから、今日はちょっとごはんを作るのが大変だなという時に、うちに来てくださればうれしいなと思います」(太郎さん)
「お野菜をたくさん使いながら、日常を大事にした奇をてらわないメニューを作っています。おうちのごはんってそうじゃないですか。誰もが知ってるメニューで、からだに安心なもの。そういう組み合わせを意識していますね」(紗代子さん)
たくさんあるメニューの中から自在に組み合わせを選べるのも〈ITOHEN〉の魅力。その日の気分や体調によって食べたいものは違うもの。がっつり食べたい時は揚げ物やお肉を、昨日はたくさん食べたから今日はお野菜中心にと、組み合わせによって内容やボリュームを変えられるのです。
小さいお子さまが喜ぶハンバーグやコロッケもあれば、ご年配の方が食べたいと思う、昔ながらのおかずまで。その幅の広さが家庭料理なのでしょう。〈ITOHEN〉さんのレパートリーは100種類以上!毎日、15種類ほどあるメニューは週替わりで、毎週行っても新しいおかずが楽しめますし、季節ごとにもメニューが大きく変わります。
「お義母さんがすごく料理上手なんですよ。子どもの頃、運動会の時に作ってくれたものとか、人が集まった時に出す春巻きとかは、お義母さんのレシピを変えないでそのまま作っています。揚げものとかも毎日の忙しい生活のなかで作るのはなかなか大変。でもやっぱりおいしいから、そういうおかずを食べれたらうれしいだろうなっていう気持ちで一生懸命作っています」(紗代子さん)
「ご年配の方が『昔はよく作ってたけど、最近はもう作らなくなった』とおっしゃるメニューもあって。もう作らなくなったおかずでも久しぶりに懐かしく食べてもらえるように、僕らが少しお手伝いできたらいいなと」(太郎さん)
体の栄養だけでなく、心の栄養にもなる、そんな場づくりを。
お店をはじめるにあたって、紗代子さんは「場を作りたい」と太郎さんに伝えたのだそう。そこで、おそうざいのテイクアウトだけでなく、食べられるイートインのスペースも作ろうと2人は考えました。
「日々の中で力添えしたいと思ったんです。本当にみなさん抱えていることがそれぞれあって、介護だったり、子育てだったり。でも、お店に来てもらって会話してちょっと気分が変わったり、お茶を飲んで気分転換したり、そういう場所になれたらいいなと思って。体の栄養もすごく大事なんですけど、心の栄養というか、おしゃべりしたり、一息つく場所があることで得られるものってあるんじゃないかなと思って」(紗代子さん)
たとえ、一人でごはんを食べていたとしても「ここでは一人じゃないんです」と紗代子さんは話します。
「台所ではスタッフみんなで料理をしていますし、切ったり炒めたり料理する音の中で食べている感じで。お茶をお出しするタイミングもお食事されている様子をうかがいながら出していますし、たとえ一人でごはんを食べていても、一人じゃない空間は作れてるんじゃないかな。この場所を設計する時も、ほどよく見通せながら、でもあまりお客さまとの距離が近すぎないようにと設計士さんにお願いしました。ほどよい距離感を大事にしたかったんです」(紗代子さん)
ひっきりなしにおそうざいを買いに訪れるお客さまがいるにもかかわらず、ゆっくりと食事が楽しめる空間づくり。台所でテキパキと働く高橋さん夫妻をはじめとするスタッフの方たちの存在もまた、居心地のいい理由なのでしょう。
石神井というコンパクトな街だからこそ生まれる、近しい関係性。
東久留米に住んでいることもあって、西武線沿線でお店を出したいと考えていた高橋さん。「石神井公園」駅に決めたのは、「公園があって、素敵な個人店がたくさんあった」から。
「石神井エリアは思ったよりコンパクトなんですよね。自転車で行ける範囲内に、おもしろいお店がたくさんある。衣食住が充実していて、ひとつの街でまとまってあるのがいいなと思います」(太郎さん)
毎年、石神井氷川神社で、5月の第3日曜日に開催される人気のイベント「井のいち」や、毎年11月3日に開催される「森のJAZZ 祭」などへの参加を通して、徐々にお店同士の横の広がりが増えていったと言います。
石神井という街でもうすぐ10年目を迎える〈ITOHEN〉。今では街にすっかり溶け込み、石神井エリアになくてはならないお店になりました。 “街のおそうざい屋”として、お子さま連れの方から年配の方までいろいろな世代の方が通ってくれるのも商店街という立地だったからこそ。
「一人暮らしされている高齢の方からは『良さそうなベルトがあったから旦那さんに』って持ってきてくださったり、田舎からたくさん届いたからと、おすそ分けをいただいたり」(紗代子さん)
「自転車ももらったんですよ(笑)」(太郎さん)
そんな親しみのこもったご近所づきあいが自然に生まれるのも、働く人よりも暮らす人が多い石神井という街だから。そして、おそうざい屋という日々の食卓を身近に支える場所だから。そして何よりも、ほがらかな高橋さん夫妻おふたりの人柄によるものだからなのでしょう。
今回ご紹介した〈たべものや ITOHEN〉について
■住所:東京都練馬区石神井町2-13-5
■営業時間:11:00〜18:30
■定休日:日曜、月曜、祝日
■公式サイト:http://itohen.sub.jp/
※2024/02/28時点の情報です。
photo:Chihiro Oshima, Kaori Oouchi text:Kayo Yabushita