飯能初のグルメバーガー店が、街の大人の社交場に。〈GEORGE’S BARger〉が発信する新たな飯能のカタチ。
鴨下城司 西武線在住歴28年
生まれも育ちも飯能。東京でバーテンダー、ハンバーガーショップ、レストランなどで修業を積み、2017年2月〈GEORGE'S BARger〉をオープン。
東京で修業を積んだ自信が裏目に。必死でもがいた1年目。
のどかな街並みの中で一際目を引く、ハンバーガーのイラストが描かれた看板とアメリカンテイストな外観。大手ハンバーガーチェーン店しかなかったこの街に、飯能初のグルメバーガーショップが誕生したのは4年前のことでした。
「こだわりは、国産牛100%のビーフパティ。赤身肉を9mmに粗ミンチして、ゴロッとした肉々しい食感と噛み応えを引き出しています。和牛のやわらかさとジューシーな脂のうまみを堪能できるハンバーガーに仕立てています」
都内の有名グルメバーガー店で修業を積み、アメリカで数々のハンバーガーを食べ歩いて研究を重ねたという〈GEORGE'S BARger〉の店主・鴨下城司さん。飯能と代官山のバーで、バーテンダーとして働いた経験を生かし、本格的なカクテルも飲めるバーガーショップ&バーを展開しています。
生まれも育ちも飯能という鴨下さん。東京への憧れを持ちつつも、縁あって地元・飯能で独立することに。東京で培った確固たる自信を持ち、「絶対いい店になる」と信じて疑いませんでした。ところが、「オープンから1年くらいは今と全然違いました」と振り返ります。
「地元の人たちは、店に行く=友達に会いにいくっていう感覚の人が多いんです。だから、嫌われたら終わり。それと、飯能の市民性なのか、おしゃべり好きな人がすごく多い。それなのに僕は、代官山でバーテンダーをやっていたプライドが捨てきれず、凝ったカクテルを作ってみたり、しゃべり口調もかっこつけていたり、“東京から帰ってきました感”をすごく出してしまっていた。今思えば、成長した自分を地元の人に見てもらいたかったんでしょうね。だからか、何だかしっくりハマっていない感覚がありました」
「街のせいにしちゃいけない。君が街を変えればいい」。原点に立ち返れた常連客の言葉。
「田舎は新しいものを受け入れるのにすごく時間がかかる」。オープン当時は、それを痛感させられる日々だったと鴨下さん。
「最初の頃は『マクドナルドのほうが安い』って毎日のように言われていました。都内ではすでにグルメバーガーブームが起きていたけど、飯能にはまだグルメバーガーの認知度や需要がなかったんです。でもバーガーのクオリティは下げたくない。ドリンクの価格を下げて、お客さまの声に応えようとしてみたりもしましたが、それでも客層は変わらなくて……」
地元を知りすぎているから、余計なことを考えたり、背負い込んでしまったり。“地元の人たちの意識を変えたい”という想いが強すぎた結果、試行錯誤の繰り返しで、お客さまの求めることが見えなくなっていました。
「肩の力を抜きながら、本来自分がやりたかったこともやっていく。今のお店の在り方に辿り着くまで、3年かかりましたね」
その原点に立ち返れたきっかけとなったのが、常連客とのこんなやりとりでした。
「あるお客さまから、あるカクテルを飲んだという話をされた時に、それなら作れますよとお出ししたら、『もっとこういうのやればいいのに。なんで出さないの?』と。飯能ではあんまり需要がないからと答えたら、『街のせいにしちゃいけないよ。君が変えればいいじゃない』と言われて。その言葉が刺さりましたね」
いち早く取り入れていたクラフトビールも、「ビールが1000円もするなんて!」と最初は受け入れてもらえなかったそう。ところが……。
「『待ってました!』と思ってくれていた人が大勢いることに、2年目くらいでやっと気づけました。当時は、100やりたいところを40くらいに抑えていたんです。でも、我慢するんじゃなくて、徐々に60、70って広げていけばいいんだなって思えたら、気分が軽くなりました。原点さえブレなければ、共感してくれる人が少しずつ増えてくる。そう思えるようになりました」
実験的なことも挑戦できる街。“飯能初”がどんどん増えたらもっと面白くなる。
次第に、そのおいしさから“グルメバーガー”の認知度も高まり、ランチ営業は売り切れる日も珍しくないほどの人気店に。ここ数年は、〈ムーミンバレーパーク〉や〈メッツァビレッジ〉の帰りの観光客や都心から移住してきた人など、鴨下さんのバーガーや店で過ごす時間を楽しみに訪れることが増えているそう。
「ここに通ってくれるお客さまって、なぜか国際経験豊かな人が多いんです。僕もアメリカに行っていろいろと食べ歩いた経験があるし、おもしろい話をしてくれるお客さまが多い。よそのお店だと、どうしても地元話で盛り上がっちゃうけど、ここは海外の方も来るしグローバルな話ができる。こういうお店、飯能では特殊みたいです」
外から訪れる人の数が増え、若い店主も増えてきて、街の感性が変わりつつある状況に、鴨下さんはこんな未来を想像します。
「うちはアメリカンだけどメキシカンとか、まだ日本に上陸していない異ジャンルの料理とか、実験的なお店もどんどんできてほしいですね。そういうトライができる環境が、今の飯能にはあります」
〈GEORGE'S BARger〉を発信元に、数年後には“飯能初”のあんな店やこんな店が、この街を賑やかに盛り上げているかもしれません。
今回ご紹介した〈GEORGE'S BARger〉について
■住所:埼玉県飯能市東町27-6-2
■電話:042-978-9029
■営業時間:11:30~24:00
フードL.O 20:30
デリバリー&テイクアウトL.O 21:00
ドリンクL.O 23:30
木曜日ランチタイムのみ
11:30~15:00(L.O14:30)
■定休日:なし
■公式サイト:https://georgesbarger222.amebaownd.com/
※2024/02/28時点の情報です。
(photo:Masanori Wada text:Ayano Sakai)