西武鉄道社員がかなえたい

あれもこれもストーリー

Vol.1 「拝島ライナーをつくりだした 企画担当者のチャレンジ」

2018年3月10日、西武鉄道は有料座席指定列車「拝島ライナー」の運行を開始しました。全席座席指定で西武新宿駅から拝島駅間をゆったり座って移動できるこの列車は、平日は毎日ほぼ満席でご利用いただいております。ご乗車いただいたお客さまからは「座って帰ることができてうれしい」「仕事で疲れたときに利用しています」といったうれしい声をたくさんいただいています。


今回は、拝島ライナーを生み出した中心人物である、企画担当の賀田修一(ヨシタ シュウイチ)さんにお話を伺いました。こどものころからの夢だった運転士になるという夢を西武鉄道に入社してかなえ、現在は計画管理部に所属し、拝島ライナーなどの新規プロジェクトの立ち上げに携わっている賀田さん。拝島ライナーの導入にあたり、導入までの道のりや新しいチャレンジについて語ってくれました。

拝島ライナーとは?

お客さまの着席ニーズにお応えするため、2018年3月10日(土)より西武新宿→拝島駅間で運行を開始しました。

  • 平日、土休日ともに18~22時台の毎時1本、計5本運行
  • 指定料金は「西武新宿→拝島」まで大人300円
  • 拝島線内は「小平~拝島」間の各駅に停車
01

すべてはお客さまの
笑顔のために

すべてはお客さまの

笑顔のために

——賀田さんの現在の業務内容を教えてください。

賀田「現在は“計画管理部管理課”に所属し、チケットレスサービス「Smooz」の導入、有料座席指定列車S-TRAINや拝島ライナーの企画など、主に新しいプロジェクトの立ち上げに関わっています」

ー「拝島ライナー」の導入はどのような想いから実現したのでしょうか?

賀田「西武新宿駅〜本川越駅間を運行する『特急レッドアロー号』が、通勤時間帯には満席の状態であることからも、多くのお客さまに「座って快適に通勤したい」というニーズがあることは強く感じていました。そんな中、過去に西武新宿駅〜拝島駅間でも臨時で有料列車を運行させる取り組みがあったんです。短期間の取り組みではありましたが、多くのお客さまから大変ご好評をいただいたので、拝島線沿線にお住まいのお客さまにも同じようなニーズがあることを確信していました」

02

できない理由を
チャレンジする理由に

できない理由を

チャレンジする理由に

ー拝島ライナー導入にあたり、苦労された点を教えてください。

賀田「まず、停車駅や運転時刻、料金などの設定は関係部署と調整しながら進めるのですが、適正な設定に導くことに苦労しましたね。拝島ライナーを導入することでお客さまの流れがどのように変わるかを想定しながら設備を整えなければいけないからです。たとえば、今回、拝島ライナーの導入に合わせて西武新宿駅にある特急券・指定券の券売機を一台増やしました。これは、特急レッドアロー号の特急券と、拝島ライナーの指定券を併用して発売する方式を取ることになったため、従来よりも短時間に多くのお客さまが券売機に集中することが予想されたからです。増備したことによって、今は比較的スムーズにお客さまにご利用いただいております」

ーなるほど。そのほかにも調整が難しかった点はありますか?

賀田「たくさんあります。たとえば高田馬場駅ですが、あそこは以前からホームが決して広くはないので夜間の下りホームがすごく混雑するんです。拝島ライナーの運行を開始したら新たにお客さまがお並びになる列が必要になります。そこで、各停や急行などの一般列車も含めた整列乗車の方法を変更することを考えました。他社の同様に混雑しているターミナル駅がどうしているかというのも参考にしながら、いくつかの整列乗車の方法をシミュレーションするうちに、今回のように列車の種別ごとにお並びいただく列を分けてラインを引く方法を採用しました。今でも最混雑時間帯には多くのお客さまにご乗車いただくため、混雑が解消しているわけではありませんが、拝島ライナーの導入後においても比較的順調にご乗車いただいております。また、一般列車をご利用のお客さまからは『整列する場所が一目でわかりやすくなった』といううれしいお声をいただくこともあります」

ー新しいチャレンジにはとても高いハードルがあると思います。高いハードルを飛び越えるコツはありますか?

賀田「今まで有料座席指定列車を定期で運行したことがない路線に初めて導入するサービスなので、実現へのハードルは低くありません。できない理由を探したらきりがない。そんなときに意識しているのは、社内のデスクで考え続けるのではなく組織の外に目を向けてみることです。例えばほかの鉄道会社の列車に乗ってみたり、一見すると鉄道とは関係のないサービスに目を向けてみる。すると、解決策のヒントを得られることがあります。そうやって、解決策を模索しながらできない理由をひとつひとつ解決していくことが好きです。できない理由をチャレンジする理由に変えていくことに充実感を感じています」

種別ごとに色分けした整列乗車シート

種別ごとに色分けした整列乗車シート

03

お客さまに愛される
サービスをつくる

お客さまに愛される

サービスをつくる

ーさまざまなこだわりがあると思いますが、特にこだわった点を教えてください。

賀田「特にこだわったのは、『これから先もずっとお客さまに愛される拝島ライナー』にすることです。そのために、拝島線内(小平〜拝島駅間)は各駅に停車するようにして、拝島線エリアにお住まいの多くのお客さまにご利用いただける運行としました。指定料金も、大人300円とお気軽にご利用いただける設定にしています。また、一番需要がある時間帯に運行するように運転時刻にもこだわりました。運転時刻に関しては、特急レッドアロー号でも行っているように、西武新宿駅と高田馬場駅の発車時刻を毎時15分発、18分発に統一しています。これは『この時間に駅に来れば拝島ライナーに乗れるんだ』とお客さまに覚えてもらうためです。時刻表を覚えるのって大変ですよね」

親しみやすさを大切にした、「拝島ライナー」ロゴ

ーそうですね。お客さまにとってそのような取り組みはとても助かると思います。
ロゴマークの選定にも携わったとお聞きしましたが、選定のポイントを教えてください。

賀田「ロゴの選定は、ステキな候補がたくさんあったので悩みに悩みました。最終的には、有料座席指定列車ということがわかりやすいということ、ゆったりと座ることができるイメージを想起するために、拝島の英字の頭文字であるHを座席に見立て、そこに人が腰掛けるかたちの親しみやすいロゴマークに決定しました」

04

前例のないチャレンジが
お客さまの笑顔につながる

前例のないチャレンジが

お客さまの笑顔につながる

ー「拝島ライナー」のお披露目イベントでも、これまで前例のないチャレンジをされたとのことですが、どのようなチャレンジだったのですか?

賀田「そうなんです。2018年3月4日に玉川上水車両基地にて、拝島ライナーの事前PRを目的とした『拝島ライナーお披露目イベント』を開催しました。このお披露目イベントにも課題はたくさんありました。毎年イベントを実施している南入曽車両基地や武蔵丘車両検修場ではなく、拝島線の沿線にお住まいのお客さまが気軽に参加できるように、玉川上水車両基地で開催したいということを社内で提案したんです。すると、玉川上水車両基地は狭くてイベントをするスペースが確保できない、今までそうしたイベントを行った前例がないなど、社内から様々な課題があげられました。イベントの一環として西武新宿駅から40000系車両にお客さまを乗せて玉川上水駅までではなく、乗車しながら車両基地まで行くプランも企画したのですが、普段はお客さまを乗せて走らない車両基地内を、お客さまを乗せて走るためには運行許可をとるのも大変でした」

—それでもチャレンジすることを諦めなかった。

賀田「はい。そういったできない理由をクリアしながらチャレンジを続けて、イベント開催まで漕ぎ着けたことは大きな自信になりました。中でも、駅から車両基地にお客さまを乗せていく臨時列車は大反響で、1,000件を超える応募がありました。また、お披露目イベントには好天にも恵まれて5,000名を超える多くのお客さまにご来場いただきました。特にご近所からおこさまを連れてご来場いただく笑顔のお客さまを見かけると、大変でしたがやっぱりやってよかったと感じています。そういう瞬間が仕事のやりがいに繋がっています」

—できない理由をクリアしてチャレンジを続けることが、賀田さんの仕事に対するやりがいに繋がるということなんですね。

賀田「そうですね。『できない理由を探すより、できる方法を考える』ということを、常に念頭において仕事に取り組んでいます。できない理由は簡単に出てくるのですが、そこで諦めずに粘り強くできる方法を考えてチャレンジすることが、新たな施策を生み出すことにつながると実感しています。また、今回のお披露目イベントを成功に導くことができたのは、周囲の関係者の方々に積極的に協力していただいたから実現することができたと強く感じました。車両基地の方々はお客さまに気持ちよく施設を見ていただけるよう、進んで基地内の整理整頓や窓ふきまで行ってもらい、運転関係の方々には普段は走行しない線路を運転するために様々な手配や関係部署への連絡をお願いし、駅係員や乗務員には、多くのお客さまの誘導、ご案内など本当に様々な方々の協力があってこそ、このようなイベントが開催できるのだと実感しました」

「拝島ライナー」デビュー出発式

「拝島ライナー」デビュー出発式

「拝島ライナー」の宣伝チラシやステッカー、お披露目イベントで配られたグッズなどを考えるのも、賀田さんの業務

「拝島ライナー」の宣伝チラシやステッカー、お披露目イベントで
配られたグッズなどを考えるのも、賀田さんの業務。

05

拝島ライナーがかなえた
たくさんの夢や想い

拝島ライナーがかなえた

たくさんの夢や想い

ーチャレンジが生み出した拝島ライナーですが、お客さまの反応はいかがですか?

賀田「うれしいことに、非常に高いご支持をいただいています。実際に拝島ライナーは、平日は満席になる列車も多いです。“仕事で疲れて帰宅するときでも、拝島ライナーがあれば、いつでも必ずゆっくり座って帰ることができる。” そんな拝島線沿線にお住まいのお客さまの願いをかなえたいという想いで実現に向けて走ってきました。このまま拝島ライナーが定着していくことで、拝島線沿線にお住まいのお客さまの座って帰りたいという想いを、かなえつづけていけたらと思っています」

ー実際にご利用されるお客さまを見てどんなことを思いますか?

賀田「自分自身もなるべく都心から帰宅する際には拝島ライナーに乗車するようにしていますが、多くのお客さまにくつろいでお帰りいただいているようでとてもうれしく感じています。現在の業務は、サービスを開始して実際にご利用いただいているお客さまの状況をダイレクトに感じられる喜びがあり、それをもう一度味わうために仕事に取り組んでいるようなものです。拝島ライナー導入前から、お客さまの座りたいニーズが高いことはわかっていましたが、実際に毎日ほぼ満席で運行しているのをみると、お客さまの想いをかなえられたと実感します」

06

日常生活での発見を生かした
チケットレスサービス「Smooz」

日常生活での発見を生かした

チケットレスサービス「Smooz」

ー拝島ライナー以外の業務で、賀田さんがチャレンジした経験を教えてください。

賀田「拝島ライナーの指定券などがWebで購入できるチケットレスサービス『Smooz』は、2013年からサービスを開始しましたが、こちらも企画段階から現在の運用・改修も担当しています。こちらの業務では、2017年10月にシートマップから座席を選べる機能を追加しました。シートマップ機能自体は他社も導入しているので、他社よりもさらに便利な機能を追加できないかと日々考えていたのですが、あるとき、旅行先で特急券を購入したときに、各号車の発売状況を『◎』『◯』『△』『×』の4つの表示でわかりやすく伝えている券売機を見て『これだ!』と思いました。この機能を『Smooz』にも取り入れたら、お客さまが空いている車両にご乗車いただくにあたり、いちいち各号車のシートマップを開くことなく、より多くのお客さまに便利にご利用いただけるのではないかと考え、導入することになったんです」

ー導入後のお客さまの反応はいかがですか?

賀田「結果的に、各車両の席が平均的に埋まるようになりました。『混んでいる車両よりも空いている車両でのんびり帰れるようになった』というお客さまからの喜びの声もいただいており、多くのお客さまから好評です。このように、仕事場で考えるだけでなく、日常生活で得たヒントが仕事に結びつくことって少なくないですよね。プライベートの時間でも常にアンテナを張るように意識しています」

号車ごとの空席状況が一目で分かるシートマップ

07

西武鉄道でかなえた
運転士という夢

西武鉄道でかなえた

運転士という夢

ー小中学生のころは野球一筋だったそうですね。夢は野球選手になることだったのですか?

賀田「いえ、野球選手はさすがに実力がちょっと・・・。私は当社ではないのですが、特急電車が運転している沿線に住んでいたこともあり、漠然とではありますが、幼い頃から電車の運転士という職業に憧れがありました。そんな想いで学生生活を過ごしていたこともあり、実際に自分の進路を選ぶ際には、特急電車のような華のある列車を運転してみたいという憧れと、職業として運転士を考えたときも、多くのお客さまを目的地まで輸送する責任感とやりがいがある仕事だと思い当社に入社しました」

—西武鉄道に入社して運転士という夢をかなえたということですね?

賀田「そうなんです。入社するとすぐに多摩川線管理所に配属されて、駅係員としての日々が始まりました。その後、車掌を経験して運転士になったわけですが、運転士としてはじめて1人で乗務したときのことは今でも鮮明に覚えています。上石神井駅から西武新宿駅に向かう各駅停車の20000系車両を運転したのですが、運転士としてみる西武新宿駅までの道のりは、1人で多くのお客さまを輸送する緊張感と、今まで自分をここまで支えてくれた両親や、運転を指導していただいた指導員の教えがあって夢がかなったことを想い、今でもとても印象に残っています」

08

お客さまに愛される
サービスをこれからも

お客さまに愛される

サービスをこれからも

ーさまざまなご経験の中で得たものを教えてください。

賀田「私は運転士になりたいという想いで当社に入社して、その夢をかなえることができました。また、入社した当初は夢にも考えていなかった拝島ライナーの導入などに携われたことは、私の会社人生の中ですばらしい経験になっています。今の部署に配属されて、最初のころは本当に自分にできるのか不安になったり、会議で議論になれば家に帰っても考え込んでしまうような時期もありました。しかし、拝島ライナーの一番列車を西武新宿駅から見送り、多くのお客さまがご乗車いただいている様子を見たときに、今までの苦労が走馬灯のようによみがえってきて、涙が出るくらい感動しました。今まで世の中になかったものを作り上げて、それを多くのお客さまにご利用いただける今の業務はとてもやりがいがあります。2018年度末には新型特急のデビューも控えているので、さらにお客さまの夢や想いをかなえられるような仕事を続けていきたいと思っています」

ー今後、かなえたい夢や目標はありますか?

賀田「新しいものを作るという感動は何度経験してもすばらしいものなので、これからも積み重ねていきたいです。お客さまを笑顔にするという、私の仕事の目標を拝島ライナーがかなえてくれました。拝島ライナーのように、お客さまに愛されるサービスをこれからもつくり続けることが、今の私の目標です」

Vol.1 Profile

賀田 修一(ヨシタ シュウイチ)

計画管理部管理課 課長補佐
1998年 入社

※所属等は、取材当時のものです。

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